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マスクが聞き取りに及ぼす影響について | 大阪医療福祉専門学校

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マスクが聞き取りに及ぼす影響について 聴覚障害者とのコミュニケーションにおいて医療従事者が心がけること

2015年度 言語聴覚士学科 優秀演題
優秀演題 ST優秀演題
言語聴覚士学科
内山 由紀子,佐井 竜也,林 亜紀,古谷 亜沙美

背景

医療従事者は患者様と接する時にマスクを着用することが多い.マスクは聴覚障害者にとって重要な視覚的情報である読唇を難しくしてしまう.私たちはそのことについて知り,配慮すべきである.
人は日頃どの程度読唇に依存して情報収集を行っているか.口唇の動きが見えない状態がどれほどの不利益を被るのかについて調査した.この実験を通して日常会話場面における聴覚障害者のバリアフリー,有用なコミュニケーション方法や問題点について検討する.

対象および方法

対象は本校言語聴覚士学科1年生および2年生から52名を抽出した.実施場所は本校聴覚検査室の防音室を使用した.まず初めに,約20~30dBの遮蔽効果がある耳栓を着用し,騒音下で2度の聞き取りを行った.実験は,1回目は話者がマスクを着用した状況で単語の聴き取りを行い,2回目は話者がマスクを外した状況で同様に行った.この実験において使用した単語はSLTA-ST(標準失語症検査 補助テスト)の低頻語である25単語である.最後に,実験に関するアンケートを行った.被験者は各項目を4段階で評価した.

結果

Ⅰ.1回目(マスクあり)と2回目(マスクなし)の平均得点を比較したところ,25問中マスクありでは11.9点,マスクなしでは17.7点であり,有意差が認められた(対応のあるt検定,p<.05)
Ⅱ.被験者を話者と面識のある2年生群と,面識のない1年生群に分けて比較した.マスクありの時の平均得点を比較したところ,2年生群は13.5点,1年生群は10.4点であり,面識があることによる有意差が認められた(対応のないt検定,p<.05)
Ⅲ.実験結果からモーラ数毎に単語を分類し,それぞれの正答数をマスクあり時とマスクなし時に分けて比較したところ,マスクあり時とマスクなし時は共にモーラ数が少ない単語に比べてモーラ数が多い単語の正答率が高かった.
Ⅳ.口の動きを頼りに聴き取りを行っていたと自覚している被験者が全体の8割を超えていた.
Ⅴ.「イライラした」と答えた被験者は1年生群の方が多くみられた.話者と面識のある2年生群においても「イライラした」と回答した被験者は約半数見られた.

考察

Ⅰ.被験者は口の動きを頼りに解答していた可能性があり,さらに語音の聴覚情報と読唇による情報を併せて活用することで,より効果的に語音が識別できると考えられる.
Ⅱ.被験者と話者の親密度がマスクあり時の実験結果に影響を与えていると考えられる.
Ⅲ.単語内で聞き取れない箇所があっても,音素修復することで既知感のある単語を予測していると考えられる.よって,その単語を予測する手掛かりが多いほど音素修復に有効である.
Ⅳ.アンケートと実験結果から健聴者であっても読唇の効果が大きいことが分かる.
Ⅴ.面識のない話者がマスクを着用したまま話をした場合にはより内容を聞き取り難くなり,聞き手に精神的な苦痛を与えると考えられる.

おわりに

①より効果的に語音を識別するには聴覚と視覚の併用は有効である.
②聞き手は話し手と面識があることにより,マスクで読唇情報が遮られていても話し方や声のトーンなどを手がかりに正答へ導いている.
③語音を明瞭に弁別しやすくするためには,表情・動作が聞き手に見えるよう,環境設定についても考慮する必要がある.
④話し手がマスクを着用していると,聞き手に精神的な苦痛を与えると考えられる.
以上のことから,医療に従事する者はマスクを外して聴覚障害の患者と接することが望ましい.不可能な場合は表現を豊かに,より丁寧に伝えることを心がけることが大切であると言える.

文献

1)城間将江.人工内耳手術後の聴取評価に関する研究.東京大学大学院医学研究科 博士論文,2000.
2)鈴木恵子・白井真理子・他:中等度難聴者の語音識別における視覚併用の効果.Audiology Japan44,2001,185-192.

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