卒業研究発表

吃音についての意識調査

2015年度 【言語聴覚士学科】 口述演題

背景

吃音の統一的定義はいまだ確立されていない.VanRiperは「吃音とは音,音節の繰り返しや引き伸ばしによって,または構音の構え,あるいは回避や阻止などからのもがき反応によって,発話の流れが阻害されたときに発生するものである」としている.
成人吃音者の会である言友会の活動はセルフヘルプグループとして位置づけられ,大きな役割を担っている.言友会で行われた吃音者へのアンケートからは,自分の悩みや苦しみを周りに真剣に聞いてもらう経験が少ないことが明らかになっている.しかし社会理解を考えた場合,吃音に対する意識調査がなく,吃音についての知識がどの程度普及しているのか不明であった.そこで今回アンケートを実施し,吃音が社会においてどのように理解されているのかを調査したいと考えた.本研究の目的として①吃音に対する意識調査を実施することにより,現状から理解を深めていくための問題点を明らかにする.②言語聴覚士として吃音者のサポートが出来るよう知識を身に付けることとする.

対象および方法

対象:大阪医療福祉専門学校 昼間部1年生 総勢158名 有効回答数158名
内訳:理学療法士学科45名,作業療法士学科46名,視能訓練士学科37名,言語聴覚士学科30名
方法:アンケート方式(事前に吃音の説明を行う)

結果

認知度について,言語聴覚士学科では100%,3学科合計は20%が知っていると回答した.その他の回答では差がなかった.コミュニケーション障害を生じる(92%),吃音であることを隠している人が多い(83%),就職や結婚などが困難になる(67%),自然に治る人もいる(55%),同じ言葉を一緒に声を合わせて言うと吃音は出ない(30%),という結果になった.吃音の友人への対応を仮定した質問での回答上位は,ゆっくり待つ(47%),ゆっくり焦らないような言葉かけをする(34%),言いたいであろうことを言う(13%)となった.吃音の治療法を問う項目では,単音の発声練習(37%),心理療法(33%),言えるようになるまで何度も言う練習をする(22%)という結果となった.

考察

アンケートの結果から問題点を明らかにするために,認知度の低い3学科に焦点を当てた.そもそも吃音を知らない人(80%)が多く,知っていても症状の具体的な内容までは分からない人が多いことが分かった.
認知されていない要因として,①有病率が低いため吃音者と出会う機会がない②吃音者ともし出会っても話すことが苦手な人という認識に至るなどが考えられる.しかし吃音によって対人面などに二次的な障害が起こると考える人はアンケートでは半数以上みられた.これは事前の説明により二次的な障害が起こることを推測できたからだと考えられる. 吃音の治療法として一般的に心理療法と薬物療法とされている¹⁾.回答結果からは発声練習を3学科(59%),ST(51%)が選択していることから,練習すれば治ると認識されていると考えられる.3学科では,言えるようになるまで何度も言う練習をする(22%),だがSTは(7%)と低い値となっており,吃音という言葉を知っている(100%)ことが関係していると考えられる.これらの結果から理解を深めるためにはまず認知されることが必要と考えられる.広く認知されることで,吃音者を追い詰めるような対応を減らしていくことが出来ると推測する.吃音者への対応法の結果からは,適切な対応方法を選んでいない人が半数以上であった.ただ,「ゆっくりと待つ」という相手を急かさない程度に言葉かけをする方法は,相手を思いやっての回答であるとも考えられる.

まとめ

社会における吃音の認知度が低いことが分かった.吃音者に主に関わる言語聴覚士として講演や勉強会などの啓発活動を行い,吃音が認知される機会を増やし,理解を広めていく必要あることが考えられる.

文献

1)都筑澄夫編著:改訂吃音,東京,株式会社建帛社.2013,179.
2)「吃音」に関するアンケート調査(internet);
http://geocities.co.jp/HeartLand-Icho/5580/questionnaire.htm

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