卒業研究発表

静的視野計および動的視野計の中心窩閾値と視力の関係性

2015年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

視野検査には,静的視野計と動的視野計がある.近年,視野検査の主体はGoldmann視野計(GP)による動的視野測定からハンフリー自動視野計(HFA)による静的視野測定へ変わってきている.しかし,動的視標では静的視標に比べ光の刺激が強いとされている.先行研究で鼻側の静的動的視野乖離が見られることが明らかになっている1).そこで,今回は中心感度には結果に影響がないのかを明らかにする.さらにHFAとGPは結果に差があるのかを明らかにする.

対象および方法

対象は矯正視力(1.0)以上得られる正常眼の本校学生30名30眼とした. 方法は、反射式視力表にて遠見視力(1.0)に達した矯正レンズに眼鏡箔(0.2,0.4,0.6,0.8)2)を貼り,それぞれの近見視力を新標準近距離視力表にて測定する.眼鏡箔装用下にてHFAの中心窩閾値とGPの中心感度の測定を行った.中心感度から中心窩閾値への変換は,静的と動的視野間で,空間和に基づく調和現象が成立すると仮定した場合の動的視標に対応する静的閾値(サイズⅢ)1)を用いて検討した.よって,以下,中心感度は中心窩閾値と表記する.
検証方法は小数視力値をlogMAR値に変換し,一段階の差を一定にし,中心感度の変動を検証した3).
分析方法は相関・回帰係数を採用した.

結果

HFAは,視力の低下と中心窩閾値の低下に0.76の強い相関がみられた.logMAR値が一段階低下すれば99%の確率で中心窩閾値に0.84dBの低下が見られた(図1参照).対してGPは,視力の低下と中心窩閾値の低下に0.83の強い相関がみられた.さらに99%の確率で中心窩閾値は1.17dB低下した.(図2参照).0.84dBと1.17dBで,HFAとGPには1.44dBの差がみられた.

考察

HFAとGPで中心窩閾値の乖離がみられたのは先行研究1)同様,動的視標では静的視標に比べ光の刺激が強いためと考える.またグラフより,個人によるばらつきがみられる.これは対象者の本来の中心窩閾値を設定していなかったためであると考える.

まとめ

本学科学生30名30眼に対し,HFAおよびGPの中心窩閾値と視力の関係性を調べた.視力が低下すると中心窩閾値はHFA,GPともに低下がみられた.しかし,HFAとGPの低下の度合いには乖離がみられた.

文献

1)萱澤朋泰,奥山幸子・他:自動視野計による静的動的視野乖離の検討.39,2014,69-78.
2)佐々木信,帆足悠美子:弱視治療用眼鏡箔(Bangerter foils)における有効性の検討.41,2012,243-248.

記事一覧
大阪医療福祉専門学校 TOP

CATEGORY MENUカテゴリーメニュー

もっと詳しく知りたい方は