卒業研究発表

側頭部圧迫による眼圧変動

― 日常生活における眼圧上昇の要因 ―

2016年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

近年,我が国における後天性疾患の失明原因第一位を緑内障が占めており日本の社会において大きな問題として考えられている.眼圧が高いほど視神経が障害されやすくなり,緑内障のリスクが高いとされている1).眼圧上昇の要因を調べたところC.Tengらは「ネクタイによる頸静脈の圧迫で眼圧上昇する」と,報告していた2).側頭部にも頸静脈から続く浅側頭静脈が走行しており,その圧迫でも眼圧が上昇するのではないかと考えた.厚生労働省は高齢者の筋力維持向上を目的として水泳を推奨しているが3),その際着用する水泳帽子とゴーグルによって眼圧上昇するのであれば、緑内障を発症するリスクになりうる.そこで,側頭部の圧迫による眼圧の影響を調べた.

対象および方法

対象:視能訓練士学科3年制課程3年生20名
手段:非接触型眼圧計(CT-90A TOPCON)にて 測定
条件:緑内障と診断を受けたことのない女性かつ 非喫煙者
圧迫方法:水泳帽とゴーグル装用
方法:装用前 → 装用5分、10分後 → 脱帽1分後に眼圧測定
検証方法:T検定(対応あり)

結果

装用前と装用後5分後では,P=0.007<0.05となり,眼圧は有意に上昇した.装用後5分と10分では差はなかった。装用10分後と脱帽1分後での眼圧変動を比較したところP=0.11>0.05となり,有意差はなかったが減少する人が多かった.

考察

装用前と装用5分後では側頭部圧迫により眼圧が上昇するが,これは2つの原因が考えられる。 1つ目は水泳帽とゴーグル装用により頸静脈が圧迫され,上強膜静脈圧が上昇すること.2つ目は圧迫により交感神経が働くことで,ノルアドレナリンのα1受容体の血管収縮作用が優位になり血管が収縮され,眼球の房室に流入する房水の量が増加し眼圧が上昇すること4).しかし,圧迫に対する慣れが生じ副交感神経が優位に働くため,一度上昇した後それ以上上昇しないと考える.

まとめ

目的は,側頭部圧迫によって眼圧が上昇するか検証することである.方法は,装用前と水泳キャップと水泳ゴーグルを装用して側頭部を圧迫した際の眼圧変動を検証した.得られた結果として,装用5分後で眼圧上昇がみられたが 10分後では差がなかった.脱帽後には装用前の水準まで下がった.側頭部を圧迫することによる眼圧上昇は一時的であった.

文献

1)日本眼科学会(internet): http://www.nichigan.or.jp/public/disease/ryokunai_ryokunai.jsp
2)C.Teng,R.Gurses-Ozden,et al.: Effect of a tight necktie on intraocular pressur.87,2003,946-948.
3)厚生労働省 身体活動・運動(internet): http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/b2.html
4)血管の構造・毛細血管・動脈静脈 gooヘルスケア(internet): http://health.goo.ne.jp/medical/body/jin021
5)ストレスと自律神経の科学(internet): http://hclab.sakura.ne.jp/nerve_phis_sympathetic.html

記事一覧
大阪医療福祉専門学校 TOP

CATEGORY MENUカテゴリーメニュー

もっと詳しく知りたい方は