卒業研究発表

天気の変化が医療機関の利用率に与える影響

2016年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

背景

「天気の変わり目に痛みが強くなる」「天気が 悪い日が近づくと調子が悪い」「痛みが強いので,明日は雨だ」などよく耳にする.佐藤らの研究論文の調査結果において,天気と痛みには明らかな相関関係が見つかっており,人体は常に天気の変化にさらされ,正常な生理機能だけでなく様々な慢性疾患も影響を受ける.また,頭痛や神経障害性疼痛などの慢性痛,あるいは心臓疾患,喘息,眩暈症など他の病態についても気象と症状との間に関係のあることもわかっている.2004年に行った「健康と気候に関するアンケート」の結果によると,一般生活者及び慢性疾患患者の約7割が実際に天候や季節変化の体調への影響を経験していると解答している.そこで本研究では3施設の医療機関に情報提供のご協力を頂き,実際に天気と来院患者数の相関があるのか統計・分析を行い,これらの研究成果を紹介し,天気によって身体的変化を気にする患者様を理解しつつ,医療機関の人員配置などに有用な一資料を提供することを目的とした.

対象および方法

医療機関3施設の利用率と天気の関係を調査した.調査の詳細は,医療機関3施設に調査協力を依頼し2015年1月1日から同年12月31日の一年間の期間を定め,一日毎の診療科別患者来院数の調査をした.その調査結果と調査期間の一日毎をχ二乗検定にて統計・分析を行った.その後,月数別かつ診療科別の来院患者数を晴れ・雨・曇りの平均でわけ,どの天気の時に来院患者数が増加するかを調査し,医療機関の利用率に影響を与えるかを調査した.これらの調査から出た結果を元に,入院外来患者でも気温や湿度のように条件が変化しない気圧に条件を絞り,比較し気象のどのような変化が来院患者数に影響を及ぼすのかについてさらなる調査を行った.

結果と考察

天気のデータと3病院の一日毎の診療科別来院患者数の合計を比較し,χ二乗検定により天気の変化が医療機関の利用率に有意な影響を及ぼすことが示唆された.表1より雨天日の来院患者数の割合が高いことが見受けられた.これに関しては気温などの気象データの関連性も考えられる.そこで,さらに気象データの気圧に条件を絞り,比較することで医療機関の利用率に影響を与えるか調査を行った.その結果,年間の最低気圧と最高気圧を比較すると気圧が来院患者数に影響を与えることが窺えた.すなわち,研究結果より気温と湿度については来院患者数との関連性は見られなかったが,気圧と来院患者数に関連する可能性があると示唆された.

まとめ

本研究では気温と湿度については来院患者数との関連性は見られなかったが,気圧と来院患者数に関連する可能性があると示唆された.この結果を医療機関の人員配置や今後医療従事者になる者として身体的変化を気にする患者様を理解するための一資料として役立てていきたい.また近年,異常気象が頻発し今後も増加し続けることが予想されることから,天気の変化が人体に影響を与え,医療機関の利用率が増加することから気象変化の影響を知ることの重要性も増しているといえるであろう.そして,より質の高い医療サービスを提供し,医療機関の経営を向上することが今後の課題となるであろう.

文献

1)天気変化と痛み-天気のことをきにする患者さんを理解するために-(internet):http://www.maruishi-pharm.co.jp/med2/files/anesth/book/16/11.pdf?1368492507
2)天気の変化と気分障害(internet): https://www.jstage.jst.go.jp/article/seikisho/48/1/48_1_3/_pdf
3)「健康と気候に関するアンケート」調査結果(internet): https://www.terumo.co.jp/pressrelease/2004/023.html
4)感染症と気象に関する統計学的研究(第1報)-特に溶連菌感染症について-(internet): https://www.jstage.jst.go.jp/article/kansenshogakuzasshi1970/58/8/58_8_750/_pdf

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