卒業研究発表

リハビリ室に潜む危険

― 理想のリハビリ環境を求めて ―

2016年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

医療現場において安全を確保することは,大変重要とされている.従来は事故に対する認識が当事者だけの問題として捉えられてきたが,近年,事故は起こりうるものとして認識され,それをどのように予防,再発予防していくか,組織全体の課題として取り込む風潮がでてきた¹⁾.専門性の違いによって事故や予防に対しての知識,意識,リスク管理力には差があると考えられる.専門性の違いから,医療事故に対する若干の認識の違いはあったとしても,チーム医療を行う以上,ある一定の共通意識は必要であろう¹⁾.その中でも作業療法士と理学療法士が共通して使用する,リハビリ室の環境について視点を共有することが事故予防に関わるのではないかと考える.

対象および方法

1.対象
 大阪医療福祉専門学校作業療法士学科昼間部3年男性10名女性22名(以下OTS),理学療法士学科昼間部3年男性25名,女性17名(PTS).
2.方法
 OTS,PTSに機能訓練室とリハ室内の物品陳列棚の2枚の写真を提示し,リスク要因だと思う箇所を○で囲み,その理由と4段階のリスクレベルを5分で記載させた.分析方法はOTS,PTSそれぞれ危険予測の数を挙げてもらった.それらを単純集計したあと,マンホイットニーU検定で比較した.さらにOTS,PTSの挙げられたリスク要因を項目に分けて内容の違いを見た.学生に口頭および書面での研究の主旨とともに,本研究の協力は自由意志であり,個人名が特定されることはないこと,成果は卒業研究発表会などで公表することを説明して研究協力を求め,アンケート用紙の提出をもって,意志の確認を行った.

結果

OTS,PTS,で挙げられたリスク要因で多かった上位5件を記載する.機能移訓練室では①丸椅子により動線が確保されていない.②マット躓き転倒する可能性がある.③車椅子により動線が確保されていない.④コードが出ているため躓き転倒する可能性がある.⑤車椅子ブレーキがかかっていないので転倒する可能性がある.という要因が挙げられた.物品陳列棚では①丸椅子により動線が確保されていない.②棚の上の物が落下するリスクがある.③ペグボードが棚からはみ出ているため躓くリスクがある.④個人情報が漏えいするリスクがある.⑤棚の中のものが落下するリスクがある.が挙げられた.また,リスクレベルでは機能訓練室のマットの項目でOTSに比べPTSの中央値が優位に高かった.

考察

機能訓練室でのリスク要因の特徴として,通路にマットや車椅子を置いていることで動線が確保されていないことにリスクを感じる人が多い.その理由として,動線が確保されていないことによって転倒リスクが上がるからだと考える.マットの項目でPTSがOTSに比べリスクを感じている理由として,PTはOTに比べ歩行練習を行う頻度が高いため,歩行訓練を想定したリスク管理を行う傾向にあると考える.機能訓練室で挙げられたリスク要因は歩行中の転倒がほとんどであったが,物品陳列棚のように状況が複雑になると,物品落下や個人情報の漏えいなど複数の意見が挙げられた.そのため生活場面に近づくほどPTS,OTS間で差が出る可能性があると考えた.

まとめ

今回,対象の情報がないので具体的な対象者をイメージしづらく,PTSとOTSの間で大きな差がでなかった.しかしOTSとPTSでリスクを感じる箇所の違いを考察し,共有していくことが必要である. 臨床経験のない学生を対象にしたため今後,RPT,OTRとの比較する必要があると考える.

文献

1)安田雅美,岩月宏:病棟で発生した転倒・転落事故の発生原因と改善策についての検討.理学療法学32, 2005,582.

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