卒業研究発表

優秀演題

平仮名視標のフォント別視力差について

― 視標の見やすさの違い ―

2017年度 【視能訓練士学科 1年制】 優秀演題

背景

 日々視力検査を行う中で,ランドルト環と平仮名視標では,同じ視力値であっても見え方に差があり,ランドルト環で1.0の視力が出ても平仮名視標の1.0は読めない人が多い事に気付いた.平仮名視標においては視知覚によってランドルト環より判別しやすいと考えられるが,実際には読みにくいのは何故かと疑問に思った.準標準視力表においては最小分離閾であるランドルト環と最小可読閾の平仮名視標は混同しているが,果たして視力値は同じなのか.また,平仮名視標に用いられているフォント以外にも世の中には様々なフォントが存在しているが,フォントごとで見やすさはどのように異なるのかを疑問に思い研究を行った.

対象

 対象者は,大阪医療福祉専門学校視能訓練士学科1年制の20歳代から40歳代の男女44名計88眼とした.その中で,完全矯正で1.5の視力値が出た人と完全矯正に+0.25Dを負荷して1.2の視力値が出た67眼を対象に行った.また使用したフォントは山地式平仮名視力表とMS明朝体,MSゴシック体,HGPポップ体,HG行書体の計5種類とした.文字の大きさはNIDEKの液晶視力表システムチャートSC-1600pola™の平仮名視標1.0の「と」「へ」「こ」「り」「に」の外径を基に全ての文字の外径を揃え視力表を作成した.得られた値は,表計算ソフトであるMicrosoft社Excel2010を用いて集計を行った.

結果

 初めにフォント別の正答率を完全矯正と+0.25D負荷に分けて集計を行った.山地式は完全矯正と+0.25D負荷の両方で正答率が高いという結果が出た.明朝体は完全矯正と+0.25D負荷の両方で正答率が低く,+0.25D負荷すると文字自体が認識されないことがあった.図より+0.25D負荷しても山地式はそれほど下がらなかったが,その他のフォントでは大きく正答率が下がるものが多かった.

まとめ

 平仮名視標では線の太さに関わらず線と線の間隔が視角1分あいていないと正答率が下がる.1mm以上の線の太さで1.5mm以上の間隔があれば文字として認識できる.最小可読閾は視知覚を利用しているが逆に視知覚があることによって他の文字と誤認される.以上のことから,文字の認識には最小分離閾の知覚が必要であり,準標準視力表に平仮名視標として使用されている山地式平仮名視標は線の太さや文字の間隔の状態からランドルト環の視力と相関していると考えられる.

文献

1)大島祐之.日本眼科全書(眼診断)VOL.5 NO.1.3.水川文庫, 東京, 1953, 10
2)所敬,松本冨美子・他:理解を深めよう視力検査屈折矯正.金原出版,東京,2012,10.
3)学童による小児試視力表の検査成績.JOURNAL OF CLINICAL OPHTHALMOLOGY.15巻(4号),1961,7-19

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