卒業研究発表

ミラーセラピーを用いた圧覚介入への可能性

2017年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

 近年,運動麻痺や感覚障害への介入方法の一つとして,山崎1)の研究によりミラーセラピーが有効であるとされ,注目を集めている.しかし圧覚に対する研究は見当たらなかった.圧覚へアプローチすることは片麻痺者のADL動作の改善においても非常に重要であると考えられる.
 本実験では,圧覚に対しての介入方法として,神経・筋に直接アプローチする方法とミラーセラピーを用いてアプローチする方法ではどちらが効果的であるかを研究した.

対象および方法

 対象は大阪医療福祉専門学校の昼間部・夜間部に在籍する35名(男性6名 女性29名)で,いずれも整形外科学的・神経外科学的に疾患のない者とした.無作為抽出によりミラーセラピー群と直接介入郡の2群に分類した.
 被験者の手掌面の圧覚の左右差を測定した後,圧覚の優れていない手に対してミラーセラピー群・直接介入群に分け,それぞれ3回各2分ずつ介入を行う.介入後,再び圧覚の左右差を測定し,介入を行った手の誤差がどの程度変化したのかを,t検定にて比較する.
 倫理的配慮として口頭及び書面で実験内容と目的を説明した後,実験参加の同意を得て行った.

結果

 図1に結果を示す.直接介入群とミラー介入群において介入前後で比較した際,直接介入群では-7.4,ミラー介入群では-2.18の減少がみられたが,t検定において直接介入とミラー介入では介入前後の変化量に有意な差がみられなかった (p=0.102) .

考察

 どちらの介入も効果はみられたものの,ミラーセラピー群と直接介入群を比較したとき,ミラーセラピー群の変化量が少なかった.
 直接介入群の変化量が大きかった原因として,直接介入群に対し視覚情報の遮断を行ったことが挙げられる.視覚情報を遮断したことにより,視覚情報がある状態と比較し圧覚刺激に注意が向きやすくなり鋭敏になったと考える.直接記入群とミラー介入群では視覚情報において同条件で比較する必要があったと考えた
 和田2)や澤田3)の実験からミラーセラピーを用いた治療において介入前後で有意な差を生み出そうとする場合,一定期間の継続した介入が必要と考えた.その事からミラーセラピー群の変化量が少なかった原因として,介入時間・頻度の少なさが考えられる.

まとめ

 ミラーセラピーを用いて圧覚を改善させることができると仮説を立て実験を行ったが,直接介入群とミラーセラピーでは結果に有意な差はみられなかった.その要因として介入時間・頻度の少なさ,直接介入群への介入時の視覚情報の遮断が考えられる.今後として,1週間・1カ月単位での連続介入,介入頻度の増加,視覚情報の統一を行い,有意な差や効果がみられるかを検証する必要があると考える.

文献

1) 山崎多紀子:ミラーセラピーの紹介-ミラーボックスの作製と片麻痺患者への試み,OTジャーナル,35(11),2001,1149-1151.
2))和田陽介,平野佳代子・他:脳卒中片麻痺患者の麻痺側足関節背屈へのミラーセラピーの効果.第43回日本理学療法学術大会 抄録集.35 (2),2008.
3)澤田優子,本田憲胤・他:鏡像課題施行時の脳血流の変化 光トポグラフィを用いて,第41回日本理学療法学術大会 抄録集,33 (2),2006.

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