卒業研究発表

作業活動として折り紙を用いた時の椅子座位の変化

― 姿勢変化を時間と姿勢保持筋の視点から観察し,姿勢変化が作業遂行の面で及ぼす影響 ―

2017年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

 病院や施設での高齢者の作業療法の機能訓練場面で椅子座位での作業活動が実施されている場面をよく目にする.菊野ら1)の研究では車椅子にて実験を行っているが久野ら2)の実験によると高齢者が机上活動を行う姿勢の割合は,椅子座位の方が車椅子座位より6倍多いという事が示唆されている.私たちはそこに着目し,高齢者が机上活動の際に行うことの多い椅子座位について研究を行った.

対象および方法

 対象:大阪医療福祉専門学校の作業療法士学科に在籍する健常者4名.
 実施方法:机上にて折り紙で鶴を折る作業を4名の対象者に同一条件で実施した.上腕長,前腕長,下肢長を計測する.椅子座位姿勢で折り紙の作業活動の開始肢位を設定し20分間行う.
 環境設定:①静かな環境で机,椅子(背もたれあり)がある.②体幹と机の距離は30cmある.③被験者とカメラの距離は126.5cmで実施し、矢状面から撮影.④被験者の肩峰,大転子,膝関節前部にマスキングテープを張る.⑤倫理的配慮は十分行い実施した.

結果

 写真1は骨盤後傾位の座位姿勢(タイプA)・写真2は軽度の骨盤後傾位の座位姿勢(タイプB)・頭頸部屈曲が過度の座位姿勢(タイプC)・実験中,下肢の動作が見られる(タイプD)に分かれた.しかし,実験開始から終了まで全員座位姿勢の変化は見られなかった.4つのタイプの中から,タイプAとBに着目した.

考察

 タイプAの座位姿勢の原因は,鵜野3)らは最長筋,腸肋筋,多裂筋は骨盤後傾位で前傾位と比較して,組織硬度の亢進を認めたとある.平尾4)らは体幹筋重視タイプと,頸部筋重視タイプの2群に分類でき,体幹重視タイプは体幹姿勢を後傾することで快適性を感じていると述べている.このことから,骨盤後傾であると考える.
 タイプBの座位姿勢の原因は,鵜野らの文献から,タイプBはタイプAよりも最長筋,腸肋筋,多裂筋の組織硬度の亢進が低い.平尾らによると頸部筋重視タイプである.頸部筋重視タイプは頸部の支持性で体幹を立てて実現し,快適性を感じていると述べている.このことから,軽度骨盤後傾であると考える.

まとめ

 全体的な姿勢の変化は見られなかったが,比較的タイプBの姿勢が影響を及ぼしにくいと考える. 作業遂行には坐位持久力・作業に対する意欲・集中力が必要であると考える.
 今後,実験の対象者を増やし姿勢の変化をみれるようにし,臨床において適切な環境・時間・姿勢・作業内容を考える必要がある.

文献

1)菊野晃史,新妻伯生:作業活動として折り紙を用いた時の車椅子座位の変化―姿勢変化を時間と姿勢保持筋の視点から観察し,姿勢変化が作業遂行の面で及ぼす影響を検証する―.大阪医療福祉専門学校卒業論文集.2005.
2)久野真矢・他:高齢障害者が机・テーブルと関わる活動.作業療法21(105),2002,330-333.
3)鵜野亜矢・他:座位姿勢の骨盤前後傾では後傾の方が緊張が高い組織高度計による検討.第48回日本理学療法士学大会.P-A基礎-043. 4)平尾章成,山崎信寿:座位姿勢における生体内負荷と快適性の関係.人間工学.32,94-95.

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