卒業研究発表

整容動作の意識調査

― セラピストと作業療法学生の違い ―

2017年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

 高齢者は身だしなみを整えることで社会性や活動が活発になり,綺麗になったという優越感から対人交流も増え,QOLが上がる.整容動作は生きていくうえで必ずしも必要とされることではないが,個性や自分らしさを出すことができる.谷合¹⁾らによると整容動作は心理的・精神的自立に結びつく.また,衛生面や誤嚥性肺炎にも影響するADL動作である.
 作業療法士は,ADLに深くかかわる事で,患者様のQOLの向上に努め,その人らしい生活ができるように援助していく.しかし,実習後のセミナー発表では,排泄動作や食事動作にアプローチした内容が多いが,整容動作にアプローチした内容は少ない.これらのことから,整容動作についてもセラピストと学生では認識の違いや,関係が見られるのかと,回復段階でアプローチに違いがあるのか疑問に感じた.

対象および方法

 臨床の作業療法士35人,大阪医療福祉専門学校作業療法士学科昼間部・夜間部23人を対象とした.アンケート内容は整容動作(口腔ケア/化粧・髭剃り/洗顔/整髪/手洗い)について訓練実施状況や過去にどのような整容訓練を実施してきたか(今までの実習の中で,見学・評価した内容)について,また整容動作訓練を実施する意味,大切だと思うことを具体的に自由記述の指示に基づいて回答を求めた.結果を,テキストマイニングを用いてセラピストと作業療法士学生,急性期・回復期と生活期とで比較し分析した.倫理審査の結果許可を得て研究を行った(大医福 第16-教-016号).

結果

まずセラピストと作業療法学生の違いである.

次に急性・回復期と生活期の違いである.

考察

 セラピストと作業療法士学生を比較した結果,セラピストは言葉に具体性があり,性差や疾患別に考えた整容動作を取り入れられていることが分かった.これは,経験の差から生じたと考えられる.急性・回復期と生活期を比較した結果,急性・回復期では,機能面にアプローチし,訓練に取り入れており,生活期では,その人個人に合わせたアプローチを行っているように伺われた.上野2)らは,急性・回復期のリハが機能障害の回復を目的としているのに対して,老健施設のリハは残された心身機能でいかに快適な生活を実現するかを位置づけていることからこのような結果になったのではないかと考える.

まとめ

 整容動作だからこそ専門用語が出にくかったと考える.作業療法士は整容動作に介入しているが整容動作のみ,重視して介入していないため作業療法学生は具体的な整容動作についてのイメージが付いていない.急性・回復期は機能面を重視しているのに対し生活期は生活を重視し整容動作を取り入れている.
 今後アンケートの数を増やし,今後,実習や就職後の臨床現場で,整容動作を取り入れたい.

文献

1)谷合義旦:自立へのきっかけは身だしなみから.月間ノーマライゼーション障害者の福祉,19(216),1996.
2)上野正典,田中みどり・他:老健施設におけるリハビリテーションの現状と課題.高山赤十字病院紀要,38,7 – 12.

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