卒業研究発表

作業療法士学生におけるストレス状態の学年別比較

2017年度 【作業療法士学科 夜間部】 口述演題

背景

 医療学生にとって,入学当初から始まる専門的かつ難解な知識を学びながら送る生活は“日々の苛立ち事”の連続である.市丸ら1)のストレス度とストレッサー・ストレス反応の4年間の縦断的研究によると,1年次に比べ4年次のストレス反応が有意に高く特に「国家試験」に関することをストレスと感じる結果が増加した.実習や国家試験という最終目標に向かって,我々は小さなストレスを積み重ねてきていると考える.入学当初からの学生の“日常的な苛立ちごと”を調査し,それらに対する認知的評価や対処法を明らかにすることは,学生自らがストレスへの対象方法を認識し,来る最終年次,ひいては卒業後臨床現場における,ストレスのセルフ・コントロールの助けとなるのではないかと考えた.

対象および方法

 対象者は大阪医療福祉専門学校の作業療法士学科に在籍する,昼夜間部1年次生~4年次生306名(10代~40代)である.実施方法として各学年の授業前あるいは授業後に,『大学生用ストレス自己評価尺度(尾関),1993)』アンケートによる調査を行った.分析方法はKruskal-Wallis検定,多重比較,Mann-WhitneyのU検定,単純集計である.倫理的配慮として研究の目的・方法を説明し参加の任意性や個人情報保護などの同意書を作成し署名を求めた.

結果

 「ストレスに感じること」の自由記述にて「国試」「実習」「人間関係」をストレッサーとして挙げた群とそうでない群でU検定を行った結果,「人間関係」で有意差(P<0.01)が見られた(図1).クラス別のストレス反応の比較では,夜間部は1,2年次のストレス反応が評価年次よりも著明となった(図2).

 ストレッサーの内訳では,夜間部1,2年次は「人間関係」についての割合が多く,評価年次では,「国試」・「実習」および定期的な「学校の勉強」に関する項目の割合が多かった(図3).

考察

 「実習」や「国試」などのイベントは,必ずしも医療学生にとって最大のストレスになるとは限らない.それよりも,学生を取り巻く「人間関係」,とりわけ学外での対人関係が,学生にとっての大きなストレスになりうる可能性が示唆された.橋本2)によると,対人関係ストレッサーは,非対人関係ストレッサーよりも相対的に否定的影響力が大きいとしている.特に,学校と社会の二面生活を強いられている夜間部学生は,社会生活を優先していた初年度から,学校生活を優先した評価年次へと進むことで,学外で受ける対人関係ストレスが軽減し,評価年次にストレス反応が軽減したのではないかと考える.

まとめ

 学生にとって,学外での対人関係ストレスの軽減と学内での良好な対人サポート関係の構築が精神的健康にとって重要である.

文献

1)市丸訓子,山本冨士江・他:看護大学生のストレス度とストレッサー・ストレス反応・影響因子との関連-4年間の縦断的研究-.TheJournalofTokyoAcademyofHealthScie ncesVol.47No.2,2001,77-82.
2)橋本剛:成人における対人関係の肯定的/否定的側面と精神的健康の関連.健康心理学研究Vol. 12No. 2,1999,24-36.

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