卒業研究発表

介護士に聞く作業療法士に求めるもの

2017年度 【作業療法士学科 夜間部】 口述演題

背景

 鍛冶1)は「老健で働く多くの若いOTがリハビリ=機能訓練という誤った図式のもと,日々プラットフォーム上での機能訓練に追われ,OTとしてのアイデンティティ(専門性)を失いつつあるのではないか」と述べており,作業療法士(以下,OT)の専門性について問題視している.また,2025年には65歳以上の高齢者数が3657万人となることが予測されており,今後さらに,医療従事者と介護従事者がチームとして連携していくことが重要となる.そこで今回,OTと一緒に働いている介護士からOTに求められることやOTとの情報共有について聴取することで,OTの専門性発見への手がかりとすると共に,2025年問題に向けてOTと介護士との連携についても考察していく.

対象および方法

 対象は,電話にて同意が得られた大阪府内の介護老人保健施設(11施設)に勤務する介護士61名に対して,自由記述式によるアンケート調査を実施した.その結果から勤務歴5年目以上を「熟練者」,5年目未満を「非熟練者」に分けテキストマイニングにより分析することとした.なお,今回の対象となっている介護士とは,介護老人保健施設において介護に携わるすべての職員を対象としているため,資格(介護福祉士やヘルパー)の有無にかかわらず調査を実施した.また,本研究は大阪医療福祉専門学校卒業研究倫理委員会の承認を得て実施している.

結果

 ①「ADLについて,作業療法士に求める利用者への治療・指導は何ですか?」という質問に対して,介護士からの回答をテキストマインニングで分析した結果,非熟練者は「評価」という言葉が媒介中心性として高く,熟練者は「介助・介護」という言葉が媒介中心性として高かった.
 ②「作業療法士と介護士がどのような情報共有をすれば,お互いのスキルアップにつながると思いますか」という質問に対して、介護士からの回答をテキストマイニングで分析した結果,非熟練者は「把握」という言葉が媒介中心性として高く,熟練者は「介護・思う・お互い」という言葉が媒介中心性として高かった.

考察

 ①の結果を踏まえ,ADLの評価や環境設定,自助具に関する知識や,余暇活動に関する視点を介護士は求めており,それがOTの専門性の一部ではないかと考える.②については,日々の利用者の状態を把握すると共に,その変化をお互いに情報交換しながら,その時々に合った介助方法を共有していくことが大切なのではないかと考える.

まとめ

 今回の調査から,OTの専門性の一部を考察することができた.OTと介護士との連携については,日々のコミュニケーションが大事であると考える.また2025年に向けて,OTは介護士に専門知識・技術を共有すること,そして日々の情報交換を行うことがOTと介護士との連携向上につながり,利用者に対しチームとして質の良いアプローチが提供できるのではないかと考えた.つまり,これはOT・介護士・利用者の三者間にとって相互の利益につながるものと考える.しかし,今回の調査では介護老人保健施設に限られたものであることから,それぞれの領域に合ったOTの専門性を今後も探求していく必要があるものと考える.

文献

1)鍛冶実:老健×作業療法(士)―在宅復帰支援・在宅生活支援をマネジメントする―.作業療法ジャーナル,49(8),2015,805-808.

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