卒業研究発表

環境に存在する転倒というリスクへの視点

― 学年ごとの転倒リスクへの視点の差異の有無 ―

2017年度 【作業療法士学科 夜間部】 口述演題

背景

 林ら¹⁾の回復期リハビリテーション病棟における転倒事象の研究によると転倒が多く発生したのは,場所別では,病室とトイレであった.そのため,回復期リハ病棟では,転倒の原因を排除し減少させていく取り組みが各地で行われている.
 また,作業療法の知識は現役の作業療法士(以下,OTR)と作業療法学生(以下,OTS)では実習から得た知識や経験量は大きく違うのは明らかであるが,OTS間では転倒に関係する場所への視点やその知識はどれほど違いがあるのだろうかと疑問を持ったため,我々はOTS間の転倒環境への経験や知識量の違いを調べることで,転倒防止への新しい視点が発見出来るのではないかと考え,OTS間のリスクの差を明確にすることにより,後進の学生達の実習やリスク管理における教育において貢献したいという思いから今回の研究に取り組んだ.

対象および方法

1.対象

 大阪医療福祉専門学校のOTS昼間部の1年から3年,夜間部の1年から4年の合計154名をそれぞれ実習に行かない群,見学実習に行く群,見学実習に行った群,評価実習に行った群に分けて行った.

2.方法

 とある環境場面を見た時における転倒に関係していると思われる箇所を○で囲むという内容のアンケートを行い,その結果を単純集計し,出た結果をバブルプロットで表記し元画像と重ねることで視覚化を行った.

結果

 実習未経験群では視点は画像手前に集中していた.見学実習に行く群では視点は画像全体にあるが目立つ物に集中していた.見学実習経験群では視点が画像の左右に散らばっており,また,固有意見は他群よりも多くあった.評価実習経験群では視点が画像全体に散らばっている.

考察

 実習未経験群では画像手前や画像内の目立つ物に視点が集中している.これらは現場経験がないため,転倒リスクが高い箇所が思い浮かばず,それらに視線が向いてしまい,画像奥や細かい部分までは見にくいのではないかと考えられる.
 実習経験群では現場を経験したことにより,現場に置いて危険な個所の想像がしやすくなったのではないかと考えられるそのため,画像左右や画像奥の細かい箇所にも視線を向けることが出来るようになり,実習未経験群より,視野が広がったのではないかと考えられる.
 これらのことより,実習を経験することにより,実際の現場のイメージがつき,視野が広がるのではないかと考えられる.

まとめ

 実際に比較・考察を行なうと,実習未経験群と実習経験群の間では視点の差は存在しているが,それぞれの群間内では大きな差は存在していなかった.
 今後,実習と言う現場経験の差は視点の差に大きく影響することが分かり,それを未実習の学生に教授することにより,未実習の学生であっても実習時に転倒に関してはどの箇所がリスクになるのかを学べるのではないかと考える.

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