卒業研究発表

遠見視力検査でのランドルト環視標とひらがな視標の視力の比較

2017年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

 視力とは形態覚のことであり,物体の形態覚を知るには最小視認閾,最小分離閾,最小可読閾,副尺視力の4つの尺度がある1).文献2)では,「最小可読閾は,ある条件下では最小分離閾と同程度になる」と言われている.臨床では主にランドルト環視標にて遠見の視力検査を行う.眼鏡合わせでは,普段の見え方に近く,馴染みのあるひらがな視標を使用していることが多い.しかし,臨地実習にて視力検査の見学をさせて頂いた際,まずひらがな視標で視力を測定していき,読み間違えたところからランドルト環視標に切り替えて視力の測定を行っていた.そこで本当に最小可読閾と最小分離閾が同程度になるのか疑問を持ち,本研究に至った.

対象および方法

 本校視能訓練士学科3年制3学年のうち,方法に記載の手順にて視力1.0及び0.7得られた75名75眼とした.
 完全屈折矯正で視力1.5を検出し,次にBangerter遮閉膜を用い,ランドルト環視標で視力0.7と1.0に低下させる.ひらがな視標でランドルト環視標0.7と1.0での視力をそれぞれ測定する.

結果と考察

 ランドルト環視標0.7の場合はひらがな視標で91%低下した.また,7%は視力が向上し2%は視力に変動がなかった.視力1.0の場合は100%低下した.視力0.7では小数視力で3段階の低下が32%と多く,視力1.0では小数視力で2段階の低下が29%と多かった.T検定にて,視力0.7の場合ではt=0.00000000001,視力1.0の場合ではt=0.000000000000000000001であった.従って,ランドルト環視標とひらがな視標での視力に有意差がみられた.このことから,最小分離閾と最小可読閾は同程度の視力は得られないことになり,最小分離閾より最小可読閾の方が視力は低下することが分かった.

まとめ

 「視力は,網膜の解像力(最小分離閾),図と地の輝度比(コントラスト閾),形状の知覚(最小可読閾)の3つの観点から検討されなければならない」5)と述べている.よって,信頼性のある視力値を出したいときはランドルト環視標,見え方の確認をしたいときはひらがな視標を使用するなど,目的毎に使いわけるべきであると考えられる.

文献

1)丸尾敏夫,久保田伸枝・他:視能学 第2版.2011,55
2)丸尾敏夫:視能矯正学 改訂第3版.2012, 59
3)川嶋英嗣:平仮名視標による視力測定.
4)所敬:視力検査の現状と問題点.日本視能訓練士協会誌,26,1998,63-66
5)吉田俊郎:弱視研究の現況.基礎心理学研究, 11(2)
1992,113-118
6)大島祐之:視力検査の基準化について.照明学会雑誌,49(2),1965,73-84

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