卒業研究発表

健康関心度と視力測定における検者の介入による視力の変化

2017年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

 視力検査の際,患者の中には注視する前から「見えない」と答えることや,はっきり見える視標以外は「わからない」と答えることがある.このような患者に対し,検者が回答を促すと視力の向上を見ることがある.このように検者が被検者に働きかけ回答を促すことを本研究では“介入”と定義する.介入の効果について,花田らは視力の向上がみられ特に黄斑疾患ではそれらの割合が眼内レンズ挿入眼20.0%に対し31.8%と大きかったと報告している1).そこで我々は,日常視での見え方において,介入により変化がみられるか調査した.また介入による変化と健康関心度の関係性の有無を調査した.

対象および方法

対象:O専門学校の40歳代以上の教職員男性18名,女性3名計21名(視能訓練士学科職員を除く)O専門学校の学生男性2名,女性15名計17名,合計38名とした.方法:被検者の日常視における状態で右眼のみの遠見視力検査を行う.その後最小分離閾についての説明を行い,再度視力検査を行う.視力値は3/5の正答を持って視力値とする2).検査終了後,見え方についてのインタビューと,健康関心度についてのアンケート(アンケートのスコア化に関しては選択肢の1つ目から4・3・2・1点に分類し,合計32点満点とした)を実施した.

結果

 介入前後で視力が向上した例が17名で,変化がなかった例は21名であった.t検定(P<0.05)にて,検者の介入により有意に向上した.健康関心度の結果を表1に示す.視力の向上群と変化なし群の健康関心度をMann‐Whitney U検定を用いたが,p=0.371(P>0.05)で有意差はみられなかった.

考察

 介入前後に視力が向上したのは被検者に何らかの心理的作用がはたらいていると予想される.しかし,介入前後の回答基準に差があったかのインタビューでは,視力の変化に関わらず「自信をもった」,「安心した」などの発言があった.つまり両群において心理的作用がはたらくことが示唆された.
 統計結果より健康関心度に視力向上群と変化なし群では差がみられない原因として,被検者数が少ないことや,アンケートが独自のものであったことが考えられる.しかし,介入により視力の向上がみられたため,健康関心度に関わらず検者の積極的な介入を行うことが重要である.

まとめ

 検者の介入により視力の向上は認められたが,健康関心度との関連はみられなかった.視力検査において患者に十分な検査の説明及び介入をすることで患者の精神的負担を取り除き,より正確な自覚的屈折検査を行う事ができる.

文献

1)花田有里子・前田史篤・他:特発性黄斑前膜に対する検者の介入による視力の向上 日本視能訓練士協会誌,第41巻,2012,171-176 
2)丸尾敏夫,本田孔士・他:眼科検査ガイド,文光堂,東京,2014,100. 

記事一覧
大阪医療福祉専門学校 TOP

CATEGORY MENUカテゴリーメニュー

もっと詳しく知りたい方は