卒業研究発表

正常視野と視野狭窄の読書時間の比較

2017年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

 視機能が低下するときの二大困難は「文字読み」と「安全な歩行」といわれている.
 先行研究においてコントラストと読書速度の関係性について調べられており,黒地の白文字のコントラストが読みやすい結果となっていた1).
 また,正常視覚と求心性視野狭窄5度のシミュレーション(以下求心視野5度)の2通りについて書字速度,求心視野5度の書字効率,書字エラーを求め,縦書きと横書きとで比較検討した先行研究2)では,書字エラーの総数は求心視野5度で縦書き横書きともに統計学的に増加する結果となっていた.
今回正常視野と求心性視野狭窄では,コントラストを変えることによって,縦読みと横読みの読書速度はどの程度変化するのかを調べることを目的とする.

対象と方法

 本校視能訓練士学科3年生20名20眼,片眼(優位眼)の近見矯正視力(0.5)以上で屈折異常以外に器質的疾患がない者を対象とした.
 ミネソタ読書チャート(MNREAD-J)を参考に白地に黒,黒地に白,黄色地に黒の配色でコントラストの異なるもので,それぞれ縦読み・横読みの文章を自作し,検査距離30cmで測定を行う.使用する文の構成は,文字総数30文字で,句読点がなく漢字と平仮名の文字数を統一した.
 正常視野,求心視野5度の縦読みと横読みでそれぞれの読書時間を測定し,速度の変化を比較した.なお,読み速度のみを調べるため一度文を呈示してから測定を行った.
 求心視野5度は,ピンホールを片眼に装用し,擬似の視野狭窄を作成し,片眼はオクルーダーで遮閉した.両眼ではなく片眼にて行った理由は,両眼で行うと視野が分離されるためである.

結果

 T検定の結果より,正常視野では,どのコントラストにおいても,縦読み・横読みともに読書速度に差がない(P≧0.05)結果となった.
 求心視野5度では,すべてのコントラストにおいて,横読みの方が縦読みに比べて読書速度が速い(P<0.05)結果となった.

考察

 先行研究の結果と異なり.黒地に白文字の縦読みの読書時間が最も遅く,また,読みやすいと自覚する人もいなかった.その理由として,ピンホールが影響していると考える.

まとめ

 求心視野5度では、どのコントラストにおいても横読みの読書速度が速かった。また,黒地に白文字で縦読みと横読みで読書速度に最も差がでた.今回はピンホールを使用して視野狭窄を作成したが,今後は,実際に視野狭窄のある患者に行うと読書速度はどのように変化するかの検証を行なっていきたいと考える.

文献

1)祝沙羅,佐々木ほなみ・他 コントラストと読書速度の関係性-ロービジョン患者の読書環境向上のために-.大阪医療福祉専門学校卒業論文集,2016.
2)谷佳子,石井雅子・他:視覚障害シュミレーションによる書字パフォーマンス.日本視能訓練士協会誌,vol.44,2015,57-63

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