卒業研究発表

静的視野検査による完全屈折矯正の必要性

2017年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

 Goldmann視野測定にて強度近視の未矯正では、視野に欠損や暗点がみられたが,完全屈折矯正を行うとそれらの異常はなくなり,視野異常が疑われたり視標が見えないということも改善された1)という報告がある.
 近視の度数増加に伴い,視野全体の感度低下をきたしやすく,Humphrey自動視野計(以下HFA)では-4D以上の近視眼で1Dの近視増加につき,平均0.20dBのmean defect(以下MD)の低下がみられると言われている2).
 今回我々は,裸眼と完全屈折矯正下では中心窩閾値とMD値の結果にどの程度差がみられるかを調べることを目的とする.

対象および方法

 対象は,大阪医療福祉専門学校の視能訓練士学科の20~24歳の眼科器質的疾患の既往がない15名とした.-3.00~-8.00Dの26眼.完全屈折矯正にて遠見視力(1.2)以上,近見視力(1.0)が得られることを条件とした.
 方法として,①自覚的屈折検査にて,遠見完全屈折矯正にて遠見視力(1.2)以上,近見視力(1.0)であることを確認,②裸眼近見視力を測定,③暗室で暗順応を行う,④裸眼でHFA視野検査を行う,⑤後日完全屈折矯正下でのHFA視野検査を行った.なお,プログラムは30-2SITA-standardを選択した.
 屈折値の分類で,中心窩閾値とMD値それぞれの矯正前後の差を平均し比較した.また,視力での分類についても中心窩閾値とMD値をそれぞれ矯正前後についても平均し比較した.統計方法はT検定を用いた.

結果

 屈折度数での比較では,-3.00D~-8.00Dの26眼を1Dごとに分け、矯正前後の中心窩閾値の差を出した.
-3.00D代では0.67dB(p<0.05),-4.00D代では4dB(p<0.05),-5.00D代では6dB(p<0.05),-6.00D代では5.50dB(p>=0.05),-7.00D代では10dB(p<0.05),-8.00D代では12dB(p<0.05)の上昇が見られた.
 MD値の差の平均の結果は-3.00D代では0.85dB(p>=0.05),-4.00D代では2.19dB(p≧0.05),-5.00D代では1.94dB(p≧0.05),-6.00D代では3.69dB(p≧0.05),-7.00D代では6.45dB(p<0.05),-8.00D代では5.91dB(p>=0.05)の上昇がみられ,有意差がみられなかった.
 視力での比較では,対象の26眼の小数視力をlogMARに換算し,+0.0~+0.2,+0.3~+0.5,+0.6~+0.8,+0.9~+1.1の4群に分類した. 中心窩閾値では,+0.0~+0.2群で1.89dB(p<0.05),+0.3~+0.5群で4.50dB(p<0.05),+0.6~+0.8群で6.00dB(p<0.05),+0.9~+1.1群で10.4dB(p<0.05)上昇がみられ,矯正前後で有意差をみとめた.
 MD値では,+0.0~+0.2群で1.35dB(p<0.05),+0.3~+0.5群で2.23dB(p<0.05),+0.6~+0.8群で3.11dB(p<0.05),+0.9~+1.1群で6.03dB(p<0.05)で差があり,有意差がみられた.

考察

小数視力値が小さいほど屈折値も小さく,また屈折値が大きくなるほど,矯正前後の中心窩閾値とMD値の差も大きくなる傾向がみられた.結果の差も大きくなると考える.
 近視度数が強くなるにつれて遠点が検査距離33cmより遠くなるため,明視が難しくなった.
 よって屈折度数が大きくなるにつれて,矯正前後の差が大きくなったと考える.

まとめ

 本学科学生15名26眼に対し,矯正前後で静的視野計による完全屈折矯正の必要性を調べた.
 HFA視野検査にて検査を行う際は,完全屈折矯正の必要性があるといえる.

文献

1)小林昭子:シンポジウム「眼科検査のskill up」視野検 査・日本視能訓練士協会誌.32,2003,67-78.
2)川瀬和秀:近視眼における緑内障の鑑別.眼科,59(2), 2017,111.

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