卒業研究発表

医事課職員におけるストレスの現状と課題

2017年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

背景

 医事課は病院の事務部門の一部であり,患者と直接関わる業務を担っている.医事課職員は,病気等で来院する患者の身体的痛みの理解,患者・家族の精神的かつ情緒的不安や心細さを十分に理解し軽減に努め,患者が自分自身の病気を治そうとする積極的な受療行動に結びつくサービスの提供が望まれる.しかし,実際には医事課職員の患者への対応について不満や苦情も少なくない.
医療場面でのストレスに関する研究もまた,看護師を中心に行われてきた.これに対して,病院の事務部門を対象に職員のストレッサーやストレス反応について検討した研究は,従来ほとんど行われていない.そこで本研究では,複数の病院における医事課職員を対象としたアンケート調査により,職務ストレッサーをどの程度経験しているのかを明らかにし,検討することを目的とする.

対象および方法

 兵庫県,大阪府内の病院4ヵ所の医事課の男女問わず,20代~50代の職員合計50名の方々に,病院での業務におけるストレッサーに関する9種類,合計17の質問のアンケートを依頼した.回答選択肢は四択で,1から順に,「ちがう」「やや違う」「まあそうだ」「そうだ」とした.配付数は80部,回収数は50部で回収率は62.5%であった.

結果

(1)仕事の量的負担
「非常にたくさんの仕事をしなければならない」や「時間内に仕事が処理しきれない」という事項に対し,「まあそうだ」「そうだ」を回答した人が全体の50%以上を占めた.
(2)仕事の量的負担
「かなりの注意を集中する必要がある」や「高度の知識や技術が必要な難しい仕事だ」という事項に対し,「まあそうだ」「そうだ」を回答した人がそれぞれ全体の50%以上を占めた.
(3)身体的負担度
「体を大変よく使う仕事だ.」という事項に対し,半数以上の30人が「そうだ」「まあそうだ」を回答した.
(4)職場での対人関係
「私の部署内で意見の食い違いがある」や「私の部署と他の部署とはうまが合わない」という事項に対しそれぞれ全体の50%以上が「違う」と「やや違う」を回答した.また,「私の職場の雰囲気は友好的である」という事項に対し半数以上の37人が「まあそうだ」「そうだ」を回答した.
(5)職場環境(作業環境)
「私の職場の作業環境,騒音・照明・温度・換気などはよくない」の事項では、回答はまばらだったが,半数以上の26人が「違う」「やや違う」を回答した.
(6)仕事のコントロール
「自分のペースで仕事ができる」や「自分で仕事の順番・やり方を決めることができる」「職場の仕事の方針に自分の意見を反映」という事項に対して「そうだ」の回答が最も少数でそれぞれ10%以下だった.
(7)技術の活用度
「自分の技術や知識を仕事で使うことが少ない」という事項に対して「違う」「やや違う」の回答が半数以上の38人であった.
(8)仕事の適性
「仕事の内容は自分に合っている」では,「まあそうだ」「そうだ」の回答が全体の50%以上を占めた.
(9)働きがい(仕事の意義)
「働き甲斐のある仕事だ」という事項に対して全体の50%以上が「まあそうだ」「そうだ」と回答した.

考察とまとめ

 本研究の目的は,複数の病院における医事課職員を対象としたアンケート調査により,職務ストレッサーの経験を明らかにし,検討することであった.病院問わず,各質問に対して回答に偏りが見えた.回答は総合的に仕事量が多い,体をよく使う仕事であることに肯定的で,自分のペースで仕事ができることや自分の技術や知識を業務において使用することが少ないことには否定的であった.職場での対人関係や職場環境は病院別に意見が分かれていた.
 本研究では,大阪,兵庫に準拠し,各病院の医事課職員の現場環境や人間関係におけるストレスを課題とし,そのストレスは少なからず負の影響があると考えられる.以上のことから各病院において様々なストレスを抱えた職員達がいることが考えられる.
 しかしながら,本研究の調査対象は限られたサンプルでしかない.また,本研究では医事課に在籍する職員を対象とした.今後,医事課職員におけるストレスの現状と課題についての研究で確定的な結論を述べるためには,今後更なる研究を進め,医事課職員の実態をより明らかにしていく必要がある.

文献

1) 田中恵子・中村健壽・福岡欣治:医事課職員における組織風土,情緒的サポートとバーンアウト,患者・家族対応との関連 医療秘書実務論集(6),2016,pp1-11

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