卒業研究発表

淀川区における老老介護の現状と課題

2017年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

 日本は長寿大国であり,高齢者の増加や平均寿命の延伸に伴い社会に生じた問題の一つに多くの家庭が要介護高齢者を抱えるようになったことが挙げられる.核家族の増加,家族の個人化,介護施設の不足,経済的理由,「迷惑をかけられない」という道徳的理由から介護施設等の利用をしない人が増加しているため老人が老人を介護している姿が散見されるようになった.
 それらの介護する者,介護される者ともに65歳以上の高齢者であることを『老老介護』と呼ばれている.この老老介護において,介護によるストレスや介護疲れの果てによる介護殺人・心中・高齢者虐待等の問題が社会問題になっている.
 そこで本研究では,淀川区における老老介護の現状を調査し,今後の課題について考察することを目的とした.

対象および方法

 淀川区の老老介護の現状を調査するため淀川区某地域包括支援センターを訪問しインタビュー形式で調査することにした.
 地域包括支援センターとは,地域住民の心身の健康維持や生活安定,保険,福祉,医療の向上,財産管理,虐待防止,権利擁護などの様々な課題に対して地域における総合的なマネジメントを担い,課題解決に向けた取り組みを実施していくことをその主な役割をしている.

淀川区某地域包括支援センター担当圏域の状況

淀川区高齢者数    39965万人
淀川区世帯数     94460世帯
高齢者のいる世帯数  29038世帯
高齢者のみの世帯数  18737世帯(64.5%)
高齢化率       22.7%
独居の高齢者数    12351世帯
高齢者のいる世帯数に対し高齢者のみの世帯数がおよそ6割であり,高齢者のみの世帯数が多いことから核家族が顕著であることが推察できる.

老老介護の原因と影響

 遠方に子ども世帯が住んでいると子どもに助けを求められず高齢者夫婦間での老老介護を余儀なくされる.また,子どもに世話をされるのを親世帯は「情けない」また,「迷惑になる」と考え介護を求めないことも多い.
 経済的に施設に入るのが難しい高齢者も多く,低料金で入れる特別養護老人ホームは入居希望者が多い.しかし,要介護度が高くないと入れない.淀川区の特別養護老人ホームの数は7施設しかなく他の施設形態に比べると絶対的に足りていない状況である.
 一方,老老介護には身体的ストレスと精神的ストレスがある.身体的ストレスは,排泄時にオムツを付けてなかったら介護される者のタイミングで介護者は介護しなければならない.介護者は介護をする人に随時付き添っていられないのでそのたびに介護が必要となり,その介護も老体であれば身体的ストレスがかかる.
 また,介護される者が認知症になったときに同じことを何度も聞かれる事があり,それが介護者を疑ったりするなどの内容であると精神的ストレスがかかる.それらのストレスにより,ネグレクトや暴力,身体拘束などの高齢者虐待に繋がることも散見される.

まとめ(今後の課題と指針)

 本研究では,淀川区における老老介護の現状を調査し,今後の課題について考察することを目的とした.その結果,老老介護においては一人きりの介護,地域との関わりの不足による孤立,介護サービス等の情報不足,経済的困窮など,介護者の心身における負担は想像以上に重いことが伺えた.また,それらに起因して高齢者介護を背景とした悲劇的な事件も後を絶たない.家族だけの問題ではなく,社会の課題として,専門職,地域住民,自治体等の力を統合させ,被介護者や介護者に信頼されるケアマネジメントシステムを構築し,いかに介護の初期段階から介入し,支援システムにつながるかが重要といえるであろう.
 一方,介護老人福祉施設等に対しての印象が悪く,入居を躊躇する人も少なくない.また,介護サービス等の情報不足により利用しない人も多い.そのため地域で施設,介護サービス等の紹介をして,利用を促進することが求められる.すなわち介護を求めない高齢者も多いため地域全体での取り組みが必要といえるであろう.

文献

1) 羽生正宗:老老介護の現状分析,山口経済学雑誌.第59巻(第4号),2010年,303-341
2) 国勢調査,平成27年度版
3) 福田峰子:老老介護で生活している介護者の抱く思い,金城学院大学大学院人間生活学研究科論集,1-12

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