卒業研究発表

2型糖尿病に対して治療した症例

― In Body測定とB-SESを用いて ―

2017年度 【理学療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

 今回,臨床実習において2型糖尿病で足背に水疱が出現し,その水疱が破裂すると感染の恐れがある症例を担当した.有酸素運動実施に難渋し,有酸素運動を物理療法(B-ses)に置き換えて実施した.糖尿病により下腿に浮腫が生じていることが確認できたため, In Body S10を使用し,浮腫の経過や筋肉量を測定し,離床に向けた理学療法を実施したのでここに報告する.

維持期リハビリテーションのリスク管理

 訓練中の急死や急変,不整脈,過呼吸などを起こさないようにアンダーソン・土肥の基準やリハビリテーションにおけるリスク管理に基づいてリスク管理を行った.

In Body測定

 インピーダンス法を用い,体水分,蛋白質,ミネラル,体脂肪などを定量的に分析し,人体成分の過不足を評価できる検査である.栄養や浮腫の管理が視覚化できる.病院やクリニックなどで使用が多い.

ベルト式電極式骨格筋電気刺激法(B-SES)

 ベッド上で安全に実施することができ,脚の周囲にベルトを巻くことで下肢全体に電気が流れ,全身の70%の筋肉量を占める下肢全体を動かすことでエネルギー消費を高め,効果的に運動代用が行えるもの.

症例紹介

 80代前半の女性で2型糖尿病である.現病歴は約3か月前に左足背に水疱が出現し,当院に外来受診した.その後,特別養護老人ホームに入所するが,血糖コントロール目的にて当院入院となる.両足背の水疱が著明であり,有酸素運動の実施に難渋した.利尿剤により浮腫の軽減や体重減少が認められた.
 入院前ADLは車椅子で駆動し,排泄・清潔動作は一部介助だが,その他は自立であった.

方法

 In Body S10を使用し,週3回(月・水・金)測定を実施した.また,B-SESを使用し,臍部・大腿遠位部・下腿遠位部にベルトを装着し,腹直筋・大腿四頭筋・大腿二頭筋・前脛骨筋・下腿三頭筋に電気刺激を与え,4Hzで20分間毎日行った.  

結果

 最終評価では,下肢筋肉量の増減は体重と下肢筋肉量の統計から体重の増減に関わっており,相関があることが分かった.さらに,体重に対して下肢筋肉量はほぼ一定だということがグラフから読み取ることが出来た.しかし,浮腫と下肢筋肉量の増減には関係があるとは言えず,本症例は、利尿剤の効果が有効であったことが推察された。

考察

 藤沢ら¹⁾によると,B-SESを使用することで, ACL再建術後の患者の筋厚増加や2型糖尿病患者の筋肉内糖代謝の改善などの効果が報告されていると述べており,さらに,二次的な廃用性筋萎縮の予防が可能であるとも述べている.また,長谷川ら²⁾は,B-SESを使用する事で,大腿および下腿の筋肥大,筋力増強が認められたと報告している.
 本症例の浮腫と体重の減少は,利尿剤によって生じたと考えられる.また,グラフより下肢筋肉量の比率は一定であることから下肢筋肉量は維持されているのではないかと考えられる.これらの原因として,B-SESにより筋収縮・筋ポンプ作用が生じたことにより筋肉量を一定に維持できたのではないかと考える.

今後の展望

 維持期の患者様に対する理学療法は,拘縮予防や廃用予防が多く,筋力の維持・増強が難しいと考えられている.しかし,B-SESを用いることで筋力の維持が可能となり,維持期の患者様に有効に作用することが期待できると考える.

文献

1)藤沢千春,玉木彰・他:化学療法中の対麻痺を呈した悪性リンパ腫患者に対する骨格筋電気刺激治療の安全性と効果.理学療法学.3(4),2016,629-632.
2)長谷川聡,小林雅彦・他:初期変形性膝関節症患者に対するB-SESの効果.日本骨格筋電気刺激研究会発表,2013.

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