疼痛が膝関節可動域制限に与える影響
― 術後疼痛と筋スパズムの関わりに着目して ―
2023年度 【理学療法士学科 夜間部】 口述演題
背景
本症例は,左変形性膝関節症に対し左人工膝関節全置換術(TKA)が施行された症例である. 術後の膝関節可動域制限は疼痛・腫脹・防御性収縮が原因であると考えた.10年前に反対側の右TKAを施行した際,疼痛が強かったとの訴えがあったことより,疼痛が膝関節可動域制限に強い影響を及ぼすのではないかと考えた.上記のことから疼痛に対し,重点的にアプローチを行った結果,疼痛・膝関節可動域制限に改善が見られたためここに報告する.
対象者及び方法
対象は70代女性,診断名は左変形性膝関節症を呈し,左人工膝関節全置換術を施工した症例である.触診では左大腿直筋,左大腿筋膜張筋,左ハムストリングスに過緊張と圧痛がみられた.自動運動による可動域訓練を行い防御性収縮や恐怖心の抑制に意識しアプローチを行った.
結果
術後10-11日目に左関節可動域制限・筋力・疼痛が改善された.左大腿直筋,左大腿筋膜張筋の筋緊張の軽減も見られた.腫脹の改善はみられなかったため炎症の残存を認めた.
結論
術後のリハビリテーションにおいて,早期に術後痛を改善することで患者満足度の増加,リハビリテーションの遷延化を防止に繋がると考えられた.
1)井野拓実・他:TKA後における膝から捉えた評価と治療戦略-極める変形性膝関節症の理学療法保存的および術後
理学療法の評価とアプローチ-.文光堂,東京,2014,197-209.
2)山田英司・他:人工膝関節置換術後の理学療法.文光堂,東京,2018,178-195.
