卒業研究発表

アイマスク装着時の調理体験でOT学生が考える工夫点について

2015年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

日本社会の高齢化によって,中途視覚障害者と作業療法士が関わる機会が増える可能性が考えられる.その中で,「調理」は健康に生きる上で欠かす事の出来ない身の回りの作業の一つである.しかし,作業療法士学生が当事者の調理で困る工程を具体的にイメージし,それに対して具体的な工夫点を挙げられるかは明らかにはされておらず,そうした事が将来,患者に対して効果的な支援を行っていく上で重要ではないかと考えられる.そこで本研究を通して,作業療法士学生が効果的に視覚障害者の調理をイメージし,より具体的な工夫点を挙げる事ができる方法を検討する.

対象及び方法

大阪医療福祉専門学校,作業療法士学科昼間部3年15名・夜間部4年16名を対象に実験を実施した.実験内容は被験者にアイマスクを着けてもらった上で「包丁を使って食材を切る」「コンロの火を調整する」「砂糖と塩を見分ける」の3つの調理の工程を行ってもらった.実験前後にはアンケートを実施した.アンケート内容は実験を行った調理工程に対する工夫点を回答してもらった.倫理的配慮として,研究目的と方法について説明を行い,書面にて同意を得られたデータのみを使用した.

結果

食材を切るという動作の結果として,手の切れない包丁,食材をさわる,食材を固定する,声かけをするという意見があった.実験後では,食材を固定するという意見が増加した.

コンロの火を調整するという動作の結果として音を出す,印をつける,IHにする,コンロにさわるという項目があがった.実験後では,IHにするという項目が減少した.塩と砂糖の見分けをするという動作の結果では,実験前は粒の大きさを触り確認するという意見が,実験後には増加した.結果から,アイマスク調理を行うことで釘付きまな板を使用する,コンロに目印をつける,塩と砂糖の容器を変える,場所を固定するなどの工夫点を挙げることが可能となった.

考察

今回の結果から,具体的な工夫点を挙げるという仮説に対して,塩と砂糖の容器を変える,食材を固定する,IHにするという意見があがった.しかし,IHにするという意見では,経済的にも負担が大きいため,実験後には減少した.このことから,経済的に負担が少なく可能である工夫が必要である.また,調理を行う上で,環境設定が重要であると考える.

文献

1)植田喜久子,宮武広美:中途視覚障害者の調理行動の分析.日本赤十字広島看護大学紀要.1,2001,39-47.
2)山田幸男,高澤哲也・他:中途視覚障害者のリハビリテーション第4報-視覚障害者の調理の現状と問題点-.日本眼科紀要.50(6),1999,481-485.
3)阿曽沼樹,山下歩美:視覚障害者の調理行動に関する調査研究.福岡教育大学紀要.62(5) ,2013,169-174.

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