卒業研究発表

専門学校生の保護者に対する「終活」へのイメージ調査

2015年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

わが国は超高齢社会を迎え,終末期医療や緩和ケアを受ける高齢者の割合が増えてきている.そこで,近年注目されているのが,2012年の新語・流行語大賞にノミネートされた「終活」である.「終活」とは,「人生の終わりの活動」の略であり,人間が人生の最期を迎えるにあたって行うべきことを総括するという意味の言葉である.
少子高齢化による人口動態の変化,核家族化による住環境の変化等,社会構造はめまぐるしい変化をしている.また地域社会や親族のサポートで進められていた終末期の諸問題に対する対応も本人や限られた家族のみでしなければならない事態になり,今までにない新たな問題が生じている.
その問題のなかで,「終活」という言葉がどこまで認知されていて,自分や回りの人が,もし死を迎え入れなければならない状況になったときに,どのようなサポートをしてあげられるのかを考えなければならない.また,終末期医療や緩和ケアが注目され,苦痛の緩和,患者の意思の尊重といった死に行く過程の質が求められるようになった.人間らしい死が主張されていくなかで,患者に対してどのような終活を行うべきなのかについても重ねて検討する必要がある.
そこで本研究では,専門学校生における保護者に対しての「終活」についてのイメージおよび終末期医療や緩和ケアと「終活」の関係性などを調査し,今後の課題について考察することを目的とした.

対象および方法

対象者は大阪府内の某医療福祉専門学校生,診療情報管理士を目指す学科1年生42人,2年生42人,3年生37人,専攻科20人の計141人の学生を対象とした「終活」に対するイメージ調査アンケートを実施した.有効回答は113枚(回収率80%)であった.
アンケートの内容については「終活」に関する認知度や終末期医療や緩和ケアとの関係性など全7項目で構成され,平成27年7月に実施した.

結果と考察

1.「あなたは,『終活』という言葉を知っていますか?」の問いには,「意味まで知っている」が25%,「詳細はわからないが言葉は知っている」が42%,「知らない」が33%となり,約7割の方が「終活」という言葉を知っていることが分かった.
2.「『終活』について保護者と話し合ったことがありますか?」の問いには,「はい」が5%,「いいえ」が95%となり,大半の方が話し合っていないことから,「終活」が認知されていないことや,死を考えるには年齢的に早いからなのではと推察された.
3.「自分の保護者に死を迎えてほしい場所はどこですか?」の問いには,「自宅」が42%,「病院」が44%,「施設」が2%,「その他」が12%となり,住み慣れた自宅と終末期医療や緩和ケアを施してもらえる病院で死を迎えてほしいと思う回答が多かった.
4.「自分の保護者に『終活』をしてほしいですか?」の問いには,「絶対してほしいと思う」が3%,「万が一のときのためにしてほしいと思う」が33%,「まだ早いと思う」が47%,「その必要はないと思う」が17%となり,現時点では保護者に対して終活をしてほしいと思う意見は少ないことが分かった.
5.「現在,自分の保護者について死に対する不安はありますか?」の問いには,「不安」が12%,「やや不安」が13%,「少し不安」が33%,「そうでもない」が42%となり,少しでも不安を感じている人々が約6割いることがわかった.
6.「自分の保護者がもし末期がんなどによって死期が近いことを知らされたとき,終末期医療や緩和ケアを受けさせようと思いますか?」の問いには,「思う」が81%,「思わない」が19%となり,終末期医療や緩和ケアを必要とすると思った方々が約8割いたことから,注目されている終末期医療や緩和ケアの必要性があると考えられる.
7.「終末期医療や緩和ケアと『終活』は関係があると思いますか?」の問いには,「ある」が28%,「どちらかというとある」が51%,「どちらかというとない」が13%,「ない」が8%となり,終末期医療や緩和ケアと「終活」は関係性があるといえる.
以上のことから「終活」に対する認知・関心は低かったものの,終末期医療や緩和ケアを自身の保護者に受けてもらいたいと思った方や,終末期医療や緩和ケアと「終活」は関係があると思った方が多かった.今後「終活」という言葉だけでなく内容についても分かりやすく知ってもらうことで,より関係性が強くなると考えられた.

まとめ

「終活」という言葉は最近になって生まれた言葉でもあり,今回のアンケート結果においても言葉を知っていても内容を知らない方が多かったため,今後の高齢化を見据えて国や自治体などが「終活」に関する施策や情報発信によって広く普及されていくことが期待される.

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