卒業研究発表

優秀演題

タブレット端末の遠用視覚補助具としての有用性

2015年度 【視能訓練士学科 3年制】 優秀演題

背景

ガイドヘルパーの講習時に視覚障がい者の方がiPadを使用して遠くの壁時計を見ていた.タブレット端末(以下タブレット)には様々な視覚を補助するようなアプリケーションがあり,タブレットを近用視覚補助具として利用している論文は多々存在している.しかし遠用補助具として具体的な検証をした論文は少ない.そこで,遠用視覚補助具として代表的な単眼鏡とタブレットを比較することで,遠用視覚補助具としての有用性を検証した.

対象および方法

対象は矯正視力各眼(1.2)以上,本校学生20名とした(20~31歳).矯正は眼鏡,コンタクト上から微調整を行い,完全屈折矯正の状態で行った.
方法①として,完全屈折矯正後,眼鏡箔にて視力を(0.3)~(0.5)に低下させる.(以下,方法①) 方法②として,視力を低下させた後にピンホールにて視野10°に狭窄させる.(以下,方法②) 上記の2つの方法にて4m離れたところから自作した路線図を見て,指定された駅の発見までの時間を単眼鏡とiPad Air(以下iPad)で比較する.また慣れの問題を排除するために,事前に3分間の練習を行い,単眼鏡からiPadの順番,iPadから単眼鏡の順番に分け,それぞれを比較した.
統計処理方法は,T検定を用いて,発見時間を比較した.その後どちらが使用しやすいかのアンケートを行った.

結果

方法①では,単眼鏡での発見総合時間は平均1分23秒,iPadでは平均41秒であり,全員後者の方が短く,有意差が見られた.(図1.)
方法②では,単眼鏡での発見総合時間は平均2分27秒,iPadでは平均1分30秒であり,有意差が見られた.(図2.)
どちらの方法でもiPadの方が発見時間が短いという結果になった.
アンケートの結果は,方法①ではiPadの方が使用しやすいという意見が100%を占め,方法②ではiPadが80%,単眼鏡が20%と意見が分かれた.

考察

方法①ではiPadの方が発見までの総時間が短く,アンケートの結果からも単眼鏡よりも使用しやすいという結果になった.iPadの方が直感的な操作が行え,自動でピントが合うこと,さらに視野が広いことが,このような結果になった理由だと考えた.
そこで情報量の少なくなる視野狭窄をさせた状態では,発見時間が遅くなると考え,方法②にて追加検証を行った.結果,視野狭窄の前後ではどちらも方法①よりも発見時間が長くなり,有意差がみられた.
アンケート調査では,iPadの方が良いという意見が大半を占めており,大多数の人がiPadの方が発見時間が短く,結果と直結していた.一方,単眼鏡の方が良いという意見もあり,理由として重量の差が挙げられた.身体保持能力によっては単眼鏡の方が使用感が良い可能性がある.
発見時間,アンケートの結果から,iPadの遠用視覚補助具としての有用性が示唆された.

まとめ

遠用補助具である単眼鏡と比較して,遠用視覚補助具としての有用性を検証した.路線図の駅を発見するまでの時間を比較し,iPadの方が発見時間が短く,アンケート調査でも使用しやすいという意見が多く得られた.よってタブレットは遠用視覚補助具になり得ると考えた.

文献

1)三宅琢他.多機能電子端末(iPad2)のロービジョンエイドとしての有用性.臨床眼科.66(6),2012,831-836.

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