卒業研究発表

援助行動を拒否された経験がその後の援助場面に及ぼす影響

― コメディカル職を目指す学生の性格特性の違い ―

2015年度 【作業療法士学科 夜間部】 口述演題

はじめに

近年,医療の高度化,複雑化に伴い医療現場では「チーム医療」の重要性が叫ばれており,「チーム医療」を円滑に行うために職種間の性格特性を知ることが重要であるといえる.そこで今回,コメディカル職を目指す学生の学科間に性格特性の違いがあるかを調査した.

仮説

「新性格検査」(柳井・柏木・国生 1987)より【社会外交性】【共感性】【進取性】【劣等感】の4つの性格特性を抜粋し比較検討する.【社会外交性】【共感性】の高い人は援助行動に出やすく,【進取性】【劣等感】の高い人は援助行動に出にくいと仮説を立てる.

対象および方法

大阪医療福祉専門学校の作業療法士学科,理学療法士学科,言語聴覚士学科,大阪保健福祉専門学校の介護福祉科の学生計376名を対象にアンケートを行った.「電車でお年寄りに席を譲る」という援助行動を一度拒否された後,再び同じような援助場面に遭遇したと想定し,4つの性格特性が援助行動にどのような影響を及ぼすのか,学科間でその性格特性に違いがあるのかを検討する.また,アンケートの「普段から席を譲りますか?」という質問に着目し,普段の援助行動について調べた.研究目的及び方法について口頭及び文書で説明を行い,同意を得た.

結果

①学科間とも性格特性において,「共感性」が最も高い結果となった.②性格特性の違いにかかわらず,再び援助行動に出る傾向にあることがわかった.③どの性格特性も普段から席を譲っていたことがわかった.

考察

木村ら1)の研究より,コメディカル職は情動的共感の数値が高いことが認められている.木村らの研究や結果①より,コメディカル職を目指すものに共通して,「共感性」が高い傾向にあるといえる.また松浦2)の研究によると,「援助行動の経験回数が多いほど,次回も同様の行動がなされやすい」ということが認められている.松浦らの研究や結果②・③より,経験回数が多ければ,失敗してもまた同様の行動に出やすいと考えられる.これらのことから,性格特性よりも経験回数が実際の援助行動に影響を及ぼす場合があることが分かった.経験を重ねることによって失敗を乗り越えていくことができると考える.

まとめ

今回の調査で,コメディカル職を目指す学生は「共感性」が高いことがわかった.臨床現場で対象者と接する際に,共感的姿勢をもつことは重要であることからも,良い傾向であると考える.そして今後,私たちが作業療法士として働いていくなかで,失敗をすることは必ずある.しかし,そこでへこたれずに次の行動をとっていくことが重要である.失敗の経験を糧にし,自己研鑚を重ねることで,作業療法士としての知識・技術を向上させていけるよう,努力していくことが重要であると考える.

文献

1)木村直子,岩月宏泰:理学・作業療法士(療法士)における他者への共感性と自尊感情との関係.2003.
2)松浦均:援助行動経験と援助効果が今後の援助場面に及ぼす影響.2003.

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