卒業研究発表

医療系専門学生(青年期)の幸福感と満足度に関連する作業

2015年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

我が国は高齢化社会であり,高齢者に対する研究を進める必要はあるが,今後社会を主に支えるのは青年期である.そのため,ストレス社会で働く青年期に対するサポートが必要となると考えている.しかし,青年期の幸福感に関する研究は極めて少ない.特に具体的な作業項目についての研究はされておらず,治療に繋げるために,作業項目レベルのより具体的な関連性を知ることが必要になると考える.

対象および方法

主観的幸福感と生活満足度に関する質問紙を作成し,幸福感・満足度に最も関連する作業因子を解明する. 被験者は,某専門学校の理学・作業療法学生(昼夜間1~3年,18〜27歳,未婚の男女,計255名)である.
質問紙:(1)「あなたはどの程度幸せですか?」という項目に「とても幸せ」を10点,「とても不幸」を0点とし,0〜10点とした.次に「あなたは生活に満足していますか?」という項目に「満足である」を5,「不満である」を1とした.(2)次に,「各作業項目に対する満足度」を鷲田の作業分類から14項目を抜粋し,VASで評定を行った.行っていない作業項目については該当しない欄に印の記入を求めた.倫理的配慮は十分に行った.
分析方法として(1) に対してカイ二乗検定を行う.(2)「どの程度幸せですか?」という設問に対し6点以上及び,「生活に満足していますか?」という設問に対し4点以上の人に,各作業の関連を検討するため,重回帰分析を行う.

結果

分析方法(1)より「幸福で満足な人」が62.7%,「幸福で不満な人」が16.9%,「不幸で満足な人」が7.1%,「不幸で不満な人」が13.3%という結果が出た.生活に満足している人は幸福と感じやすいという結果が出た.この結果は先行研究1)と一致している.
分析方法(2)の結果が図1である.趣味と社会参加の満足度が幸福感に有意な関連有りという結果が出た.しかし,社会参加に関しては今回のアンケートでは該当者が少なく,妥当性があるとは言えない.

考察

田口ら2)によると,余暇志向の程度は青年期で強く,青年期は精神的充実感の得られる余暇活動を求めると言われている.村田ら3)によると,中高生は自由に楽しくという思考傾向にあり,社会のことより自分の生活に関心があり,今の生活を充実させることを重視していると言われている.これらのことから,青年期の医療系専門学生は,趣味に楽しさや精神的充実を求め,趣味によって勉強や実習のストレスを発散し,気分転換をはかっていることが考えられる.そのため,趣味の満足度の高さが幸福感・生活満足度を高めていると考察される.

まとめ

今後の課題として,青年期の患者に対して,実際の治療現場で趣味を用いているのかを調査すること,他の年代では鷲田の分類の「生きる」「働く」「楽しむ」のどの項目が関連するのかを調査することが挙げられる.

文献

1)小林盾,カローラ・ホメリヒ:生活に満足している人は幸福か―SSP-W2013-2nd調査データの分析―.成蹊大学文学部紀要.第49号,2014,229-237.
2)田口孝之,徳田安俊・他:青年期の余暇活動の研究.日本教育心理学会総会発表論文集.14,1972,118-123.
3)村田ひろ子,政木みき:中高生はなぜ“幸福”なのか~「中学生・高校生の生活と意識調査 2012」から③~.放送と調査.2013,34-43.

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