卒業研究発表

スマートフォン使用時間と涙液量の関係

2015年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

近年,総務省のアンケートによりスマートフォンの利用者が増加していると分かった.それにより眼精疲労,ドライアイ,肩こりなどの症状がみられる.しかし,先行研究でスマートフォンにより涙液量が低下するとあったが,使用時間に伴う涙液量の変化を明確に記載しているものはない.そこで,スマートフォン使用時間で涙液量がどのように変化していくのか調べたいと考えた.
スマートフォンの使用時間が増えるにつれ,涙液量が低下すると仮定し,涙液検査においてスマートフォン使用時間により涙液量への影響を検証し,研究結果によりスマートフォン使用時間の軽減,スマートフォンに伴う症状の予防といった臨床の場において,理論に基づいた説明に活かしたいと考える.

対象および方法

対象は本校学生200名にアンケートを実施し,100名を選出し涙液検査を実施した.(年齢18~31歳)検査条件は,シルマー試験第Ⅰ法により検査時間,瞬目状態を各条件下にて測定,統計処理を行った.シルマー試験Ⅰ法を選んだ理由は本法が基礎分泌と反射性分泌を測定しており,涙腺からの涙液分泌能力を知ることができるということと自然瞬目の確保ができる為である.測定は裸眼で行い,普段コンタクトレンズを装用している方には朝からコンタクトレンズを外してもらった.コンタクトレンズが結果に影響を及ぼす為である.
検査時間は5分とし,瞬目状態は自然瞬目の中で測定を行った.検査後,ドライアイQOL質問表を実施し,ドライアイ指数を導き出しドライアイの症状の重症度や日常生活への影響,精神面への影響の評価を行った.
統計処理はスマートフォン利用時間,ドライアイ指数と涙液量の関係をX²検定にて行った.

結果

涙液量・ドライアイ指数ともP値は,P=1.13267×10-60(涙液量),P=1.3962×10-36(ドライアイ指数),P値<0.01となり統計学的有意差がみられた. (図1,図2)各群の中で涙液量・ドライアイ指数ともに大きく見られた.
涙液量・ドライアイ指数ともに3~4時間群が最も高くみられたが,個人差があり,ばらつきがみられた.統計学的には使用時間に伴い,増加傾向がみられ有意差があるという結果が得られた.

考察

スマートフォン使用時間と涙液量により結果にあるような増加傾向を示し,有意差がみられた.結果よりスマートフォンの長時間使用により涙液量が減少し,ドライアイ指数は増加することがわかったので,長期間,長時間使用することにより,慢性的な涙液減少の恐れがある.また参考結果として2名の被験者にスマートフォンの8時間連続使用・8時間未使用の涙液量と瞬目回数を測定したところ,大きな有意差がみられた.このことから,使用時間に伴って涙液量が減少することが示唆された.

まとめ

スマートフォン使用時間に伴い涙液量の減少がみられたため,臨床の場においてスマートフォン使用時間の軽減,スマートフォンに伴う症状の予防といった理論に基づいた説明に活かしたいと考える.

文献

1)総務省.ICTの進化によるライフスタイルの変化(internet):http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h26/html/nc141100.html

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