卒業研究発表

優秀演題

眼軸長と屈折異常の関係についての研究

2016年度 【視能訓練士学科 1年制】 優秀演題

背景

屈折異常は軸性と屈折性の2種類に分けられるが,強度近視は眼軸が長い軸性が多いと言われている.今回,眼軸が長いにも関わらず,屈折異常が軽度である者が見られた.このことから眼軸の長さに影響を及ぼす可能性のある要因として,「屈折値」「角膜曲率半径」「身長」「年齢」の4つを挙げ,それぞれについて眼軸長との関係を検討した.

対象および方法

 対象者は,大阪医療福祉専門学校視能訓練士学科1年制41名と3年制23名,診療情報管理士学科1年生8名で.18歳から44歳の女性72名144眼とした.すべての検査を裸眼で行った.年齢と身長については被検者からの申告による値を用いた.また屈折値はNIDEKオートレフラクトメーターで測定し,等価球面した値を屈折値とした.眼軸長と角膜曲率半径はNIDEK AL-Scanで測定した.得られた値は,表計算ソフトであるMicrosoft社Excel2010を用い,それぞれの相関関係についてピアソンの相関係数検定にて検討した.

結果

 はじめに,眼軸長と4つの要因各々との相関を分析した.その結果,眼軸長と「曲率半径」「年齢」「身長」には相関は認められず,眼軸長と「屈折値」に強い相関が認められた.(表1)
 そこで,屈折値の結果を4分類に分け(正視・遠視,弱度近視,中等度近視,強度近視),それぞれ眼軸長との相関を分析した.その結果,最も強い相関を示したのは強度近視であり,弱度近視,正視・遠視でも相関は認められた.中等度近視では弱い相関を示すにとどまった.(表2)

考察

 今回,眼軸の長さと関係する要因について研究をした.その結果,眼軸長と「曲率半径」「年齢」「身長」には相関は認められず,眼軸長と「屈折値」との関係ではP値7.9E-30と相関が認められた.そこで屈折値により強度近視,中等度近視,弱度近視,正視・遠視に分類し検討を進めた.その結果,強度近視群では相関係数-0.60と最も強い相関を示し,弱度近視群では相関係数-0.52,正視・遠視群では相関係数-0.49でそれぞれ相関を示した.中等度近視群では相関係数∸0.25と弱い相関を示した.またそれぞれの屈折異常群における眼軸長の平均を見ると,正視・遠視群は23.33㎜,弱度近視群は24.34㎜,中等度近視群は25.23㎜,強度近視群は26.22㎜となった.このことからも眼軸長は屈折異常に関係していることが示唆された.

まとめ

 屈折異常の成因として屈折性と軸性の要素が挙げられる.今回眼軸長と「屈折値」「曲率半径」「年齢」「身長」について統計的分析を行った.その結果眼軸長と「屈折値」は相関が認められた.弱度近視は主として屈折性近視,強度近視は主として軸性近視と言われている.しかし今回の結果では弱度近視群も眼軸長との相関が見られ,中等度近視群では相関はあるものの相関係数が低かった.強度近視は数々の文献でも言われているように,眼軸が長い傾向が認められ,眼軸の長さが最も影響するのは強度近視群であることが分かった.

文献

1)丸尾敏夫,久保田伸枝,深井小久子:視能学第2版,文光堂,東京,2013,111-115.
2)宮友美,浅野治子,児玉州平:近視における屈折度と眼軸長の検討,日本視能訓練士協会誌第29巻(2001),127-130.
3)所敬:近視-基礎と臨床,金原出版,東京,2012,3-7,25-28.
4)所敬:屈折異常とその矯正,金原出版,東京,2015,22.

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