卒業研究発表

青年・壮年が老後に行いたい趣味とそれに必要な心身機能

2016年度 【作業療法士学科 夜間部】 口述演題

背景

超高齢社会を迎え,厚生労働省は介護予防に取り組む指針を示している.健康寿命の延伸には青年期よりの健康生活の獲得が極めて重要であり1),国民の健康問題に関わることになる医療系学生にとっては特別な課題である.そこで医療系学生を対象に介護予防を趣味という観点から研究する.

対象および方法

某医療系専門学校作業療法士学科在籍の2年生以上200名(男性80名・女性120名)を対象とし「75歳以上で行いたい趣味」1つを具体的に記入,「性別」「年齢」「必要だと考える心身機能」「現在行っていること」を選択肢から1つ選ぶアンケートを行った.「75歳以上で行いたい趣味」を9項目に分類した.倫理的配慮として研究の目的・方法,参加の任意性,撤回の自由,個人情報保護などを同意書に記載し口頭で説明を行った.

結果

「75歳以上で行いたい趣味」はスポーツ的活動,観光的活動,文化的活動が多かった.「必要だと考える心身機能」では筋力・筋緊張・筋持久力,高次脳機能,関節の可動性・安定性が多かった.「現在行っていること」では軽い運動,なし,休養が多かった.

考察

「75歳以上で行いたい趣味」では質問項目が「75歳以上」としか記載していなかったこと,若い世代が多かったこと・35%が見学実習前の学年だったことが,疾患がなく自宅で健康に生活している75歳以上を想定させ,身体を動かす趣味が多い結果に繋がったと考えられる.「必要だと考える心身機能」では筋・骨格系が多いという結果は妥当と考えられる.また高次脳機能も多かったのは介入する機会の多い作業療法士学科の学生ならではと考える.「現在行っていること」では「軽い運動」が最も多かったが,続いて「なし」「休養」が多かった.理由として対象者が10歳代~40歳代の学生のため,学業と仕事で時間を取れない・現在から行う必要を感じていないと考えられる.

まとめ

今回「老後にスポーツを行いたいと考える者は現在から運動機能維持に努めている」という仮説は成立しなかった.理由として忙しさ・現在から対策を行う必要性を感じていないことが考えられる.超高齢社会にある日本において趣味を持つことは,若いうちから運動をする事を意識し,老後の身体機能維持に繋がると考える.また趣味による知的刺激が高次脳機能の維持に繋がると考える.これらが75歳以上の健康維持に繋がり,高齢者の社会参加率の向上へ結びつくと考える.若いうちから趣味活動実施を提案することは,これからの作業療法士にとって大切になると考える.

文献

1)矢野秀典,風間眞理・他:医療系大学生の健康・健康増進活動に関する知識,意識と生活.目白大学健康科学研究1.2008,159-166.
2)竹田徳則,近藤克則・他:地域在住高齢者におけるうつの程度別による趣味活動の特徴―うつ予防・支援の手がかりとして―作業療法33(4).2014,337-346.
3)厚生労働省(internet):健康日本21総論.http://www1.mhlw.go.jp/topics/kenko21_11/pdf/s0.pdf

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