卒業研究発表

優秀演題

字体における読みやすさの比較

2017年度 【視能訓練士学科 3年制】 優秀演題

背景

 日本での視覚障がい者(児)は164万人である1).視覚障がい者の最も多いニーズは「読み,書き」である.例えば近方では新聞,書籍,値札,貯金通帳,振込用紙,遠方では黒板や掲示板など様々な「読み,書き」のニーズがある.「読む(知る)こと」と「書く(意思表示する)こと」の困難は日常生活においてQOL(quality of life)に関わる大きな問題である2).そこで今回は「読むこと」について着目した.コントラストによって読みやすさに変化があるかは以前の卒業研究発表会で報告されており,今回は,字体を変えることによっても読みやすさに変化があるのかを検討した.

対象および方法

対象は,本校視能訓練士学科3年制3年生,両眼近見矯正視力(1.0)得られた27名とした.
 視力1.0と視力0.3で,字体ごととの読書速度を比較した.
 字体は,新ゴシック体(UD字),明朝体,ポップ体を用いた.フォントサイズは52,42,32,22,12使用した.その後,22と12の間に大きく差が出たため18,16,14の追加研究を行なった.読む文章は,ひらがな,カタカナ,漢字を混ぜて作成した.手順は,①30cmの距離で新ゴシック体(UD字),明朝体ポップ体の字体でそれぞれ読む時間を測定し,どの文字が1番見えやすいかアンケートを実施した.②後日,両眼近見矯正視力(0.3)に落とし①と同様の作業を行った.③フォントサイズで0.3に落とした時の時間から1.0の時の時間を引いた差を求めた.④差の平均を取り,Tukey検定にて有意差を求めた.

結果

フォント14において,明朝体とポップ体ではP=0.0004<0.01となり有意差があった.しかし,その他では有意差はみられなかった.アンケート結果は表1のようになった.

考察

 有意差がみられなかった理由として,類似した文章にしたため学習効果が入ったことが考えられる.
 また,アンケート結果では視力0.3に落とした時に27名全員が,明朝体が見えにくいと自覚する結果となった.明朝体は縦と横の線の太さが違うため細く薄く見えていると考える.

まとめ

 視力検査の際に近見のひらがな視標では明朝体が使われているものもある.そのため,明朝体ではなく他の字体であれば,結果が変わる可能性があると示唆する.ポスターや掲示板などの字体を明朝体以外に変えることにより,QOLが向上すると考える.

文献

1) 高橋広:ロービジョンケアの実際-視覚障害者のQOL向上のために-,医学書院,東京,2006,9
2) 斉之平真弓:臨床眼科-ロービジョンの基本をマスターしよう-,医学書院,東京,2014,164-166
3) 簗島謙次,石田みさ子:ロービジョンケアマニュアル,南江堂,東京,2000,5

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