卒業研究発表

優秀演題

産後女性に多い身体的・精神的不調の改善のために作業療法士ができること

― OTが産後女性を幸せにするサポートとは ―

2017年度 【作業療法士学科 夜間部】 優秀演題

背景

 現在の産後女性のサポートについては,看護師,助産師,理学療法士等が中心になって研究している.先行研究によると,産後女性は出産と育児により,心身機能面・活動面・環境面で様々な変化が生じる事が分かっている. しかし,産後女性の先行研究は各分野が独立して行われておりアプローチも同様である.その中でも作業療法士の研究や介入,プラス面である産後女性の幸せへの文献は少ない.作業療法士が,産後女性の強みを生かし,かつ阻害因子を改善する治療プログラム,予後予測に基づいたリハビリテーションを考案し提供できれば,各職域が独立して行っていたサポートを横断的に繋げる事ができ,今後の産後女性への永続的なサポートの一助になると考え研究を行った.

対象および方法

 産後1カ月~6歳未満の育児を行う18歳~35歳までに出産経験のある女性19名.
 自由記述のアンケートをとり,得られた各質問内容をデータ化,KJ法を使用し解析を行い,ICFに落とし込み問題点や改善点や作業療法士の介入要素を考察する質的調査である.この結果を以って産後女性が幸せを感じられる場面,必要とされていたサポートを集計し幸せの要因を調査し,作業療法士として介入,サポートできる要素を分析する.倫理的配慮として,本研究を倫理委員会にかけ審査を行い,承認を得た.承認番号は『大医福 第16-教-017号』である.

結果

 産後女性の幸せに関して,プラスの因子やマイナスの因子とそれらに関連した回答を得る事ができた. 育児が生活の中心を占め,母親としての役割が強い.この役割を果たせる事が産後女性の幸福感に繋がる事が分かった.産後女性は育児に幸せを感じる一方で,育児による身体的・精神的な問題を抱えている事,子供の世話や職場復帰への不安などが日常生活に支障をきたし支援を必要としている事が分かった. 回答者全員が心身の不調を感じていたが,医療専門機関を利用していなかった.

考察

 女性達が産後に困難感や阻害因子の解消のために利用,活用したと回答があったのは,インフォーマルな人的なサポートであった. 松永らによると,インフォーマルなサポートは70%以上になるが,専門家のサポートを受けた人は10%に留まった¹⁾.今回も専門家によるサポートを望む声は半数を超えるものの実際にサポートを受けたという認識は8.4%であった. 今後産後女性の幸せに結びつく医療と地域の連携を研究していく必要があり,予後予測やADLの評価を行える作業療法士が介入しチーム医療としてサポートを行う事でより産後女性の幸福への永続的なアプローチが可能と考えられる.

まとめ

 今回得られた結果を生活行ため向上マネジメントシートへ落とし込み,MTDLPを利用して評価を行う事ができれば,これを共通言語とした医療チームの支援体制が整うのではないかと考える.今後の課題として,医療職がチームとしてどのような治療提供が可能かを研究する事も必要ではないかと考える.

文献

1)松永佳子他:産後一ヵ月の女性が受けたと認識しているサポートと希望するサポート.東邦大学医学部看護学科紀要22,2008.

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