卒業研究発表

記憶に残る提示方法

― 静止画・動画の違い ―

2015年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

記憶は日常生活を送る上でなくてはならない機能の一つである.加藤1)によると近年,様々な記憶方法の有効性があると言われている.
奈倉1)によると運動を視覚,聴覚で記憶する方法と模倣して記憶する方法では,前者のほうがより多くより正しく再生,検索,再認できるが,動画と静止画とではどちらの記憶方法が有効かは分かっていない.今回の卒業研究において静止画と動画では,どちらの方がより記憶に残るのかを明らかにしたい.

対象及び方法

本校作業療法士学科 昼間部・夜間部の学生,男性7名,女性15名の計22名.年齢19~35歳(平均23,6±4,18). いずれの対象も運動機能,感覚機能には異常はない.
(1)集計方法
各作業の工程17項目に分けた.採点は「○」「×」で判定した.2の項目2点,他の項目は1点である.よって合計点数は18点満点とした.
統計処理は,初めに各回数において,静止画・動画のそれぞれの被験者全体の平均値と標準偏差を算出した.次に各回数において2つのテスト間の結果に有意水準にてT検定を行った.

結果

結果は静止画の平均得点が13.3点,動画の平均得点が10.3であり,T検定の結果,静止画が有意に高かった(p<0.05).よって動画の提示より,静止画の提示が記憶に残ることが示された(図1).

考察

本研究の結果,静止画で記憶する方が,動画で記憶する方よりも平均点が高かった.この事から,静止画は視点が一転に集中し記憶保持がしやすく工程のイメージが行いやすいと考えた.動画は一度に大量の情報が入力され,視点が分散し視覚情報が多いため,感覚登録機での記憶保持の容量が越えてしまうと考えた.
また,感覚登録機から短期記憶貯蔵庫へ記憶を保持するためには,動画・静止画それぞれ2回提示することにより,何回も刺激を入力し,記憶を再生するためのリハーサルを行いやすくなったためなのではないかと考えられる.どちらのテストも2回刺激を入力し,再生を繰り返すことで痕跡を強めていき,再生できる量を高められたのではないかと考えた.
このことから,実際のリハビリ場面で患者さんに,寝返りや排泄動作などのADL動作説明や,折り紙や細工などの作業工程の説明に静止画を用いて何回も提示することで,記憶保持し正しく再生できる量が増え,より動作が向上すると考えた.

まとめ

(1)静止画と動画の提示の仕方での記憶では,静止画での提示の方が有意に高かった.
(2) 先行研究にあるように視覚イメージ法が有意であったため,静止画の方がイメージしやすく効果的であった.
以上のことより動画より,静止画の提示の方が記憶に残りやすいことが明らかになった.

文献

1)奈倉道典:運動を視覚,聴覚で記憶することと模倣して記憶することの違いについて.卒業研究論文集.2,2001,205-208.
2) 加藤弘樹:健常者における有効な記憶法-臨床における記憶方法の活用について.作業研究論文集.2001,89-92.

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