卒業研究発表

超音波画像を用いた運動機能評価の有用性の検討

― 運動器超音波検査部の取り組み(第2報) ―

2015年度 【未来塾】 課題研究発表

背景

我々は昨年,デイケアに通所中の高齢者の肩・膝関節の運動機能検診を行い,機能障害と運動器超音波画像(以下,超音波検査)により得られる病態との関係性について検証した.
昨年の知見を踏まえ,今回は農村地区におけるデイケアの利用者に対し,上肢は肘関節の形態的特性と肩関節との関連性について,膝関節については関節運動制限と形態との関連性について調査を行ったので,その結果について茲に報告する.

対象および方法

デイケアに通所中の高齢者14名(平均年齢85.0歳),それぞれの両上肢(肩・肘関節・前腕・手関節28肢)および両下肢(膝関節28肢)を対象に検査測定を行った.今回,上肢の機能評価は肩・肘関節,前腕の可動域測定に加え,腱板機能検査,徒手筋力検査(以下,MMT)を行ない,続いて超音波診断装置(GEヘルスケア社製LOGIQe,プローブは11MHzリニアプローブを使用)にて肩関節,肘関節の描出を行った.下肢の機能評価は,膝関節可動域測定,MMT,超音波検査にて膝関節の内側関節裂隙の観察と骨棘の有無,内側半月板偏移量を臥位 (非荷重位)および立位膝伸展位(荷重位)にて測定した.さらに内側広筋を描出し筋厚を測定した.また膝関節の疼痛評価も調査した.統計処理にあたっては危険率5%未満を有意水準とした.

結果

今回の対象28肢における肩関節屈曲および外転可動域と腱板出力の優劣,超音波所見との間に明らかな関係性はみられない一方, 2nd内旋においては,この運動に拮抗する棘下筋・小円筋に機能不全を認めた6肩の平均2nd内旋可動域は23.3度と平均43.0°より約20度近く下回り,昨年の我々の研究を支持する結果となった. 
また,肩甲下筋に機能不全を生じた肩関節の2nd外旋可動域は平均に対し16.4度下回った. 肩腱板筋の評価では10名,12肩に機能不全を認め,内訳は棘上筋9肩,棘下筋・小円筋6肩,肩甲下筋4肩で,超音波検査では,機能不全を認める棘上筋の全てにおいて筋線維の不連続性等の異常所見を認める一方,臨床上機能不全を認めない筋であっても異常所見を認めるなど,臨床所見と超音波異常所見の不一致がみられた.肘関節の超音波検査では,10肢にOAを認め,関節機能評価との相関をみたところ,肩関節の各機能評価との相関は認めなかったが,超音波検査による腱板と上腕二頭筋の委縮との関係性が示唆された.膝関節の超音波検査では,28膝のうち18膝に骨棘を認めた.MRDは骨棘がない膝の荷重位(平均3.15㎜)、非荷重位(平均2.05㎜)に比べ、骨棘がある膝の荷重位(平均6.78㎜)、非荷重位(平均4.46㎜)に有意差が見られた(非荷重位P<0.0046、荷重位P<0.0005).また,膝関節伸展制限は骨棘なし群にくらべて骨棘あり群に有意な差が見られた(P<0.05).内側広筋の筋厚は骨棘なし群、骨棘あり群間で差が見られなかった.疼痛と骨棘との関係性は認められなかった.(X²検定)

考察

肩関節内外旋の可動域低下は,それに拮抗する腱板筋の機能不全が影響することが示唆され,肘関節の超音波検査と各関節機能評価との関係性をみたところ,肩関節との相関は認めず,超音波検査に肩関節周囲筋の組織変性との関係性が示唆された.
変形性膝関節症(以下膝OA)の悪化は関節裂隙狭小化と骨棘増殖し複数の出現が見られる。結果からMRDは骨棘あり群の荷重位で大きく突出が見られた。非荷重位から荷重位によって関節裂隙狭小化・スラスト(動揺)が強まったと考えられる.
膝関節伸展制限は骨棘あり群に差を認められたのは膝OAの進行度合いと一致している.膝OAの痛みの原因は不明であるが,膝OA患者の内側広筋に痛みのない患者と比較して筋量の減少の報告がある.今回,骨棘と内側広筋との関係性が認められなかったため,超音波画像の描出される筋厚を測定するためには、骨マーキングを解剖学的な構造で一致させる必要があったと考える.
超音波診断装置は半月板や靭帯,筋の機能評価に荷重位・非荷重位での描出が可能であり病態把握にはCTやMRIより最適と言える.

文献

1) 服部惣一,小山稔・他:リハビリテーション領域における運動器エコーの意義.Jpn J Med Ultrasonics .42(1),2015,29-42.

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