卒業研究発表

大阪市児童虐待の現状

― 親子関係の修復はできるのか ―

2015年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

2000年11月に児童虐待の防止などに関する法律が施行された.この法律により,第二条に「児童虐待の定義」が初めて定められた.身体的虐待とは,殴る・蹴る・投げ落とす・激しく揺さぶる・溺れさせる・首を絞める・縄などで拘束して生命に危険を及ぼす行為などがある.心理的虐待は,暴言や脅迫などの子どもに著しい心理的外傷を与える言動を行うことである.ネグレクト(育児放棄)は,物理的には問題ないのに保護を放棄する積極的ネグレクトと知識・経済力の不足で保護ができない消極的ネグレクトがある.性的虐待は,児童にわいせつ,性的暴行,性的行為の強要,示唆するなどである.虐待によって,親子分離した子どもの親子関係の修復は,多様で複雑な課題を抱えている.
厚生労働省報道発表資料のデータによると全国の児童虐待相談件数は年々増えてきている.またその中でも大阪府は全国でも増加率が高い平成25年度より,虐待件数は児童虐待の認知度の高まりや,児童虐待防止のテレビCMにより啓発効果があり,通告件数が増加している.さまざまな虐待があるなかで大阪府では心理的虐待の次に身体的虐待が多いのが現状である.そこで,虐待がなぜ起こったのか,親が子を虐待し,その後,親子関係の原因追及・修復が可能な事なのか,どのように関係機関や人が関わっていくのかを文献を用いて今後の一資料とすることを目的とした.

対象および方法

虐待の要因は保護者側としては望まぬ妊娠や産後うつ病などの原因がある.一方,子ども側の要因は未熟児・障がい児といった育てづらさをもった子どもなどがある.
子どもが虐待されていることを隠す理由は,人に話せない,あるいは話したくない等様々なことが考えられている.最も大きな理由として考えられるのは,周りの人が信じられないことである.うっかり話してしまうとそれが親に告げられて,さらに虐待が酷くなるかもしれない.誰が自分にとって味方なのか分からない.したがって誰になにを言えばよいか分からないということも考えられる.
一方,親の愛情を求める気持ちも強いので虐待されていることを人に話すことにより,親から見捨てられてしまうかもしれないという恐れもある.

1.児童相談所

0歳から18歳までの子どもに関する相談を受け,援助活動を行う専門的行政機関である.

2.福祉事務所

虐待の通告を受理して児童相談所に送致する機関である.

3.学校 等

虐待の発見や発見後の援助支援機関のひとつとしての役割を果たす.

4. 保健所・保健センター

母子保健をその活動の主目的のひとつとする機関である.

オレンジリボンは,子ども虐待防止運動のシンボルである.起源は,2004年に起こった児童虐待をきっかけに2005年にNPO法人が二度とこのような事件が起きないようにという願いをこめて,子ども虐待防止運動が始まった.2006年から全国的にオレンジリボンが広まりはじめた.子どもへの虐待をなくしたいという志しのもとに,全国で共通したシンボルとするために,目指すべき目標を定めた.

まとめ

児童虐待防止法で,2000年に施行されてから通告・相談が義務となった.厚生労働省の調べによると,児童虐待防止法が制定される以前より2000年以降の虐待発見率は上がっている.しかし制定前にも虐待はあったが報告されていない件数があったのではないかと考える.
現行の日本の児童虐待に対する制度ではまだまだ虐待がなくならないのではないかと考え,また一度虐待が起これば親子関係の修復は不可能ではないかと考えられる.今後の課題としては,どうすれば虐待がなくなり,子供たちが笑顔で暮らせるかということをさらに研究することが期待される.

文献

1) 児童虐待問題研究会編:Q&A児童虐待防止法ハンドブック.ぎょうせい,東京 2008, pp6,pp16,pp64
2) 石井昭男:子どもの虐待防止・法的実務マニュアル. 明石書店,東京,1998,41-43.
3)児童虐待の現状(internet):
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-119 00000-Koyoukintoujidoukateikyoku/0000090901.pdf
4)子供虐待防止 オレンジリボン運動(internet):
http://www.orangeribbon.jp/about/orange/orange_character.php

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