卒業研究発表

骨盤ポジションの相違により降段動作を獲得した症例

2015年度 【理学療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

今回,頸椎症性脊髄症を呈し,椎弓形成術を施行した症例を担当させていただく機会を得た.術後生じた著しい右下肢支持性低下によって降段動作での膝折れを認めたが,前傾位での動作学習を促したことによって降段動作を獲得した.また表面筋電図にてその動作を再現し,考察を加えたのでここに報告する.

症例紹介

40歳代後半の女性,平成27年3月に左肩部,殿部,両下肢のしびれが出現し,頸椎症性脊髄症と診断された.同年6月にC3~6椎弓形成術,C5/6左椎間孔拡大術,C7上縁椎弓切除を施行された.術前ADLは困難ながらも自立されており,家事やパートの仕事をされていた.退院後も術前ADLが要求され,早期ADL獲得が必要となる.

評価と治療

初期評価時, 右下肢の支持性低下がみられ,MMTでも左下肢に比べ,右の筋力低下がみられた.特に右膝関節伸展MMTは4であるものの,遠心性収縮が困難で持続的な収縮も困難であり,またextension lagがあった.立位姿勢時にはみられないが,階段降段時の骨盤後傾が特徴としてみられた.検査結果から右膝関節伸展筋力低下,動作観察の結果から骨盤ポジションが膝折れを助長していると考えた.膝関節伸展筋力増強訓練とともに,骨盤前傾,体幹前傾位での降段動作訓練による運動学習が必要であると考え,口頭(指示、結果のフィードバック)や徒手(誘導、制動)での動作への介入をし,前傾位での降段動作,CKCでの機能的膝伸展機構獲得を目的として行った.

考察

結果として機能的膝伸展機構を用いた降段動作を獲得し,自立に至った.骨盤前傾,体幹前傾位で降段動作を行うことで重心線が膝関節軸,また前方を通り,膝関節屈曲外的モーメントは減少する.よって大腿四頭筋の活動は減少し,また大殿筋,大腿二頭筋,下腿三頭筋の活動は増大することで,機能的膝伸展機構を用いた降段動作を行うことになる(図1を参照).表面筋電図においても骨盤前傾,体幹前傾位での筋活動が上記のものであると確認された.

まとめ

頸椎症性脊髄症(中枢性)による右膝関節伸展支持性低下によりADL低下していた.降段時,大腿四頭筋の遠心性収縮により膝関節制御を行うのでなく,大殿筋,大腿二頭筋,下腿三頭筋を用いた機能的膝伸展機構を獲得することによって降段動作を獲得した.神経障害により筋力低下(運動単位動員・発射頻度)が生じ可逆的変化が乏しい症例においては,CKCにて筋活動の協調性に対するアプローチの重要性が示唆された.

文献

1)奈良勲:図解理学療法検査・測定ガイド.文光堂,東京,2009,734-803.
2)Jacquelin Perry.Judish M.Burnfield:ペリー歩行分析正常歩行と異常歩行.医歯薬出版,2012,259-263.

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