卒業研究発表

現代社会におけるインターネット依存について

2015年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

平成23年度通信動向調査の結果によると,平成23年の1年間にインターネット (以下、ネットとする) 利用者数は推定9610万人,人口普及率は79.1%とされている.平成13年度の利用経験者数は5593万人,人口普及率46.3%と比べると10年間で劇的に増加していることが分かる.また,ネット利用率の推移においては,中高生の年齢層において高い割合で利用している状況にあることが伺える.
ネットは情報を手軽に収集でき,教育現場でも教材として利用されているので,生活に必要不可欠なものである.このようにネットは,子どもの学習に有効な学習技術を与える一方で,ネガティブな影響を与えることが報告されている.家族間のコミュニケーションが減少し,社会的な繋がりが狭くなり,憂鬱感と孤独感が増加している.また,児童生徒を対象とした研究において,ネット依存傾向とメンタルヘルス,心理・社会的問題性との関連を検討し,依存傾向が高いほど心理・社会的状態が望ましくない傾向を示すことが明らかになった.
また,中学生への情報機器の浸透に焦点を当てた研究から,中学生の自室滞在時間や自室内のテレビ視聴時間の長さが父親との関係形成に影響を及ぼしていることがわかっている.このような悪影響は看過できない問題といえるので,近年ではネット依存が注目されている.ネット依存の研究の多くは,大学生等を対象に行われており,子どものネット依存と家族に関する知見は乏しい.そのため,ネット依存にある子どもとその家族がどのような状態にあるかを把握することが課題となっている.
家族研究の視点から,アルコール依存症,摂食障害,非行,いじめ,不登校といった様々な問題が個人的ではなく家族全体の問題であると考えられている.このことから,ネット依存でおいても家族の問題が反映されている可能性が考えられる.
そこで本研究では,家族機能に着目すると共に,ネット依存について検討することを目的とした.

本論

1.ネット依存傾向とは

日本におけるネット依存は,いくつかの定義が存在しており必ずしも一致しない.その理由として,日本においてネット依存は,諸外国ほど問題視されていない.ネット依存を「ネット依存傾向」としてとらえる方向にあることがあげられる.それについて,「ネットに過度に没頭してしまうあまり,コンピューターや携帯電話が使用できないと何らかの情緒的苛立ちを感じること,また実生活における人間関係を煩わしく感じたり,通常の対人関係や日常生活の心身状態に弊害が生じたりするのにもかかわらず,ネットに精神的に存在してしまう状態」と定義している.ちなみに家族機能とは,家族全員との関係で個々人がどのように考え対応するかという機能に加え,家族の関係性をどのように維持しようとしているのかという家族の機能のことである.

2.ネットがもたらす影響および普及率

平成23年度の通信動向調査によると,ネット利用者は9610万人,人口普及率は79.1%である.年齢階級別ネット利用率の推移では,6~12歳においては平成21年度より低下しているものの,その他高齢者も含め利用率は年々高くなっている.
近年,ネットの急速な普及にともない,ポジティブな効果とネガティブな効果があり,ネガティブな傾向では,心理・社会的状態が望ましくないといえる.さらには,家族や友人との良質な対面コミュニケーションが減少するなど,人間関係にまで影響をおよぼしていることが報告されている.

3.ネット依存と家族の関係

日本におけるネット依存は,若年層に頻度が高いことが報告されている.小中学生のネット依存傾向は,家庭関係が強く影響していることから,家庭関係が不良であるほどネット依存傾向が高くなることを指摘し家庭関係が良好であれば健全なネット利用が促されるのではないかと推測する.つまり情報機器の保有率の増加によって,家族機能とその家族関係が大きく変化している可能性があり,家族関係との関連について再度検討していく必要がある.

まとめ

本研究では,情報機器の所有から利用状況について把握し,ネット依存傾向と家族機能との関連を検討した.今後の課題として家族の視点,とりわけ両親からの視点もみる必要があると考えられた.そうすれば,ネット依存傾向と家族との観点をより明らかにできると考えられる.

文献

1) 平塚健太:インターネット依存傾向と家族機能との関連.順天堂大学大学院スポーツ健康科学研究科 修士論文.2013.
2) 鄭艶花:インターネット依存傾向と日常的精神健康に関する実証的研究.心理臨床研究.2008.

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