卒業研究発表

優秀演題

コントラストと読書速度の関係性

― ロービジョン患者の読書環境向上のために ―

2016年度 【視能訓練士学科 3年制】 優秀演題

背景

ロービジョン患者が見やすいと感じる色のコントラストは黒字に白文字だとされているが,臨床現場では,白地に黒文字の検査表が一般的であり,黒地に白文字の検査表の使用頻度は少ない.
紀ら4)の卒業研究において,視標のコントラストが視力に及ぼす影響について発表されており,その研究ではランドルト環の近見視力標を使用していた.そこで,日常生活で必要不可欠な文字にすると,どのような変化があるか疑問に思い本研究に至った.
研究結果から,黒地に白文字のコントラストで読書速度の向上がみられるか検討する.

対象および方法

本校視能訓練士学科3年制3年生
片眼近見矯正視力(1.0)得られた20名20眼
 クリアファイルにて,視力を①(0.05)②(0.1) ③(0.2)④(0.3)⑤(0.4)⑥(0.5)に落とす.
ミネソタ読書チャートを参考に,白地に黒文字・黒地に白文字・黄色地に黒文字の配色のものを自作し,視力0.05/0.1/0.2/0.3/0.4/0.5の読書速度を測定し,その後自覚的なアンケート調査を行った.
以下,白地に黒文字をA,黒地に白文字をB,黄色地に黒文字をCとする.
 学習効果がでないように提示順はまずA→B→Cで行い数日後A→C→Bの順で行った.

結果

読書速度の平均値から,全ての視力で黒地に白文字が最も速い読書速度であることが言える.
自覚的な見え方のアンケートでも,本研究と同様の黒地に白文字のコントラストが最も見やすい結果となった.

考察

 本研究結果より,どの視力でも黒地に白文字の読書速度が最も速いことから,黒地に白文字のコントラストは見やすいと言える.
 視力0.2のみ順位がB→C→Aとなったが,提示順を変えても差が見られないことより,0.2は誤差の範囲であると考えられる.

まとめ

 今回の研究結果から,どの視力においても,黒地に白文字のコントラストが見やすいことが分かった.
 普段利用する本や教科書のコントラストを変えることにより,低視力者の読書環境の向上,また,ストレスを軽減させることもできると言える.
 今後の課題として,
①正常者との比較を行う
②視野狭窄を追加することによって差は出るのか
の2点を挙げる.

文献

1) 丸尾敏夫,久保田伸枝,深井小久子:視能学第2版 56.474.
2)所敬:屈折異常とその矯正改訂第6版 38.54.
3)高橋広:ロービジョンケアの実際-視覚障害者のQOL向上のために- 24.25.
4)紀佳歩,酒井麻耶,他:視標のコントラストが視力に及ぼす影響-ロービジョン患者のより良いQOL向上のために-
5)小田浩一:MNREAD-J JKチャートマニュアル
6)眼科診療プラクティス編集委員:眼科ガイドシリーズ 眼科検査ガイド 125.

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