卒業研究発表

軽度発達障害を持つ子どもへのアプローチ

― 保護者からのインタビューをもとに ―

2015年度 【言語聴覚士学科】 口述演題

はじめに

軽度発達障害は「周りとは少し違う」と認識され,適切な支援を受けられていない.軽度発達障害児の問題が認知されにくい状況のなかで,各段階での適切な支援を考察していく.
軽度発達障害をもつ子どもの各段階の移行期にどのような支援が必要であるか,相談室という環境を活かし,軽度発達障害のある子どもを持つ保護者へインタビューを実施した.
その結果から,各段階や移行期の適切な支援を考える.その中で言語聴覚士(以下STとする)がどのような関わりをもつことができるかを検討する.

対象および方法

ことばの相談室に通う,軽度発達障害のある子どもをもつ保護者3名へ「気づき」「幼稚園」「小学校」「中学校」「高等学校」「STに求めること」の項目に分け,50分程度の半構造的なインタビューを行った.

結果・考察

幼児期では療育施設と保育園を併用することが多いことが分かった.小学校では学習面での問題が顕著となり,どう対処していくかが課題となる.中学校では対人関係が問題となり,生徒一人一人に行き届いた支援が必要となるが,教師の十分な対応は困難である.高等学校では,対象児に合った学校を選択することが出来ていることが伺われた.
このうち小学校,中学校での問題に焦点をあてる.保護者から得た要望に対し,以下の3つのアプローチが考えられる.
①学校へのアプローチとして,巡回相談員やS.E.N.Sなど専門家の配置が挙げられる.これらにより教師の負担軽減に繋がるのではないかと思われる.
②間接的アプローチとして,こども家庭センター,発達障害者支援センター、親の会,ペアレントトレーニングが挙げられる.このような社会資源を活用することにより,保護者からより専門的に聞き,アドバイスをすることができると考える.
③直接的アプローチとして,ボランティアなどの活用,地域包括ケアシステムの活用,また小児を担当できるSTの養成や病院での発達障害児訓練の受け入れにより関わりを持つ機会を増やし,要望を反映させることが出来るようになるのではないだろうか.
これらの各段階に対し,STが小児分野の知識を増やし,積極的に関わる機会を増やすことが重要である.しかし現状はSTのマンパワー不足により難しい.STの数が少なく小児の専門分野化が進み,他分野のSTは関与しにくい.この現状の打破には社会資源を知り,活用していくことが必要だと思われる.また勉強会などに参加し,得た知識を積極的に共有し,様々なサービスを保護者や教師,医療従事者が活用できるようSTから発信していくことも必要なのではないだろうか.

まとめ

インタビューから,小学校,中学校での支援が重要であることがわかった.STが出来る支援として3側面のアプローチが考えられた.STは小児分野の知識を増やし,社会資源を知ることが必要である.

文献

1)中村達也,鮎沢浩一・他:特別支援教育における小学校教員とSTの連携に関する調査.言語聴覚研究.11(3),2014.

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