卒業研究発表

日本国内の配偶者間における家庭内暴力の現状

2015年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

はじめに

ドメスティック・バイオレンスとは,英語の「domestic violence」をカタカナ表記にしたものである.内閣府では,各々の場面によって異なった意味に受け取られるおそれがある「ドメスティック・バイオレンス(以下DVとする)」という言葉は正式には使わず,「夫・パートナーからの暴力」という言葉を使っている.(内閣府のホームページより)
一口に「暴力」といっても様々な形態が存在し,これらの様々な形態の暴力は単独で起きることもあるが,多くは,身体的暴力,精神的暴力,経済的暴力,性的暴力などが挙げられる.
日本でDVに関して本格的な調査研究が行われたのは,1992年に「夫(恋人)からの暴力についての調査研究会」による「夫(恋人)からの暴力についての調査」からだといわれている.また,それまでの家族の問題,夫婦間のプライベートな問題として取り上げられるようになってきた背景には,マスメディアによる報道だけでなく,世界情勢の変化に伴う外圧も影響したと考えられる.
これらの状況により,1999年に総理府による全国的なDV実態調査が行われ,2000年に結果が報告された.これを受け2001年10月13日に「配偶者からの暴力の防止および被害者の保護に関する法律」(DV防止法)が一部施行され,日本の行政の中で本格的なDV対応が行われることになった.そこで,本研究では日本の配偶者へのDVの傾向・事例がどのようなもので,それに対し日本ではどのような対策やDVを受けた人のケアがなされているかを調査・考察することとした.

本論

1.DVについての現状とサイクル

配偶者の暴力は,家庭内で行われることが多いため発生件数を知ることは困難である.
平成25年度に全国の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数は99961件である.そのうち配偶者からの暴力事案認知件数は49533件で,暴力事案における検挙件数4405件,刑法等の適応による検挙が4300件,保護法令法による検挙が110件となっている.
DVには3つのサイクルがあるといわれている.暴力の前兆である(緊張期),怒りのコントロールが効かず,猛烈な暴力を振るってしまう(爆発期),被害者に対して謝罪,愛情がみられる(ハネムーン期)である.被害者は,このハネムーン期の加害者が本来の加害者だと錯覚し,別れることを躊躇してしまうケースも少なくない.

2.日本でのDVの対策及びケア

DV防止法は平成13年10月から施行されているが,DV防止法とは,配偶者からの暴力に関する通報,相談,保護,自立支援等の体制を整備し,配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とした法律である.この法律を起点に本格的にDVへの対策がなされた.そしてその効果は特に女性に対する暴力に対して大きな効果があったが,被害者の救済業務に従事している婦人相談所職員やシェルター関係者を中心に,法は不十分であるという意見が根強くあり,法改正を念頭に置いた意見が多く公表されていた.そして,DV防止法は平成16年,平成19年と新たに改正され,三度目は,平成25年7月3日に改正され,平成26年1月3日に施行された.DV防止法は,三度改正されてきたが,現在でも加害者に対する対策はなされていない.

3.今後の施策について

現実にDV対策は,犯罪としての処罰と並行して罰金を高くすることにより,発生を防止することが意識されているといえる.加害者は暴力の代償として様々な負担が課せられるだけでなく,DVが公になれば社会的な評判は下落し,いろいろな面で不利益が生じることになる.したがって,DVについては,加害者に「配偶者に暴力を振るえば損である」という自覚を持たすというような施策が必要だといえるであろう.

まとめ

本研究では,日本国内の配偶者間における家庭内暴力の現状について調査を行い,考察した.現在のDVへの対策は,被害者に対してのケアや対策は行われている.しかし,加害者への更生が充分なされていないことや,加害者が「配偶者に暴力を振るえば損である」という自覚を持っていないことが多いことが本研究を通してわかった.そこでこのようなケアや対策を行い,加害者がDVを未然に防ぎDVそのものを無くすことが今後の課題であろう.

文献

1)川上千佳:我が国におけるDV加害者への取り組みの現状.奈良女子大学社会学論集. 10, 2003,159-167.
2)野口康彦:大学生カップル間におけるデートDVと共依存に関する一検討.山梨英和大学紀要. 8, 2009, 105-113.

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