卒業研究発表

色覚異常の見え方体験アプリケーションの再現性

2015年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

近年,スマートフォンの多様化が進んでおり,携帯アプリケーションで色覚異常者の見え方が体験できるアプリケーションがあることを知った.現在,色覚体験アプリケーションの再現性に関する論文の先行研究がないことから,再現性があるかどうかを確かめる.今回使用するアプリケーションは,色覚異常を高速演算で計算して予測した異常者の見え方を使用しているため,再現性に乏しいのではないか,と考えた.又,今後学校検診で色覚検査が再導入され始めるため,ますます色覚患者受診数が増加すると予想され,見え方の理解を深めたいと思い本研究にいたった.

対象および方法

対象は,正常色覚者20名20眼とした.本研究はアプリケーションの再現性の有無に着目しているため,スクリーニング(色覚異常であるか正常色覚であるかの振り分け)を目的とする.従って,使用する色覚検査表の検査距離は,被検査者が見えやすい距離をとるようにした.方法は,携帯アプリケーション「色のシミュレーター」を使用した.iphoneに限定し,画面の明るさを統一するため,明るさは最大とした.使用色覚検査表は,スクリーニング用(石原式色覚異常検査表,東京医大表,新大熊表,SPPⅠSPPⅡ)を行った.それぞれの検査表で,Protan・Deutan・Tritan別で検査結果を集計し,各色覚異常の異常判定に相当するかを評価し,アプリケーションの再現性を検討した.

結果

Protan(第1色覚異常(赤錐体))アプリケーション使用時ではSPPⅠでは100%異常と判定され,新大熊表は20%,TMC10%,石原表・SPPⅡでは0%とまったく異常が検出されなかった.Deutan(第2色覚異常(緑錐体))では,SPPⅠ・SPPⅡ・新大熊表・石原表で100%異常に判定され,TMCでは10%となった.Tritan(第3色覚異常(青錐体))は,SPPⅡで100%異常と判定された.

考察

Protanを使用すると,SPPⅠで異常判定が100%であった為,有用なのはSPPⅠだと考える.Deutanで,SPPⅠ・SPPⅡ・新大熊表・石原表で100%異常判定ができたため,この4つの表が再現性に優れ,有用であると考えた.TritanはSPPⅡのみ適用で、異常判定は100%となった.この事からProtan・Deutan・Tritanで100%異常判定のできたSPPⅠ・SPPⅡの再現性が高いと考えた.この事から,学校検診などで保護者に説明する際,SPPⅠ・SPPⅡを利用すると色覚異常の見え方が正確に分かり,色覚異常への理解が深めやすくなると考えた.また,その他の検査表は再現性の高い検査表を選び,色覚異常にあわせて補助的に活用していくといいと考える.

まとめ

今回色覚異常の見え方が体験できるアプリケーションの再現性を検討した.結果は検査表においてばらつきがみられ,SPPⅠではProtan・Deutanで100%異常判定され,スクリーニングの再現性が高いことがわかった.SPPⅡではProtan0%・Deutan100%・Tritan100%と,Deutan・Tritanで再現性が高いことがわかった.石原表はDeutanで100%が得られProtanより再現性が高く,新大熊表はProtan20%・Deutan100%とProtanのほうが再現性が高かった.TMCはProtan・Deutan共に10%の検出率であり再現性は低い結果となった.臨床では再現性の高い検査表を選択すれば,色覚異常の患者家族に見え方を提示し,理解してもらうことができると考えられる.又,視能訓練士の学生においては,学内実習での被検者にこのアプリケーションを使用することで,より臨床に近い検査練習ができることが期待される.

文献

1)アプリケーション/色のシミュレーター(internet):http://asada.tukusi.ne.jp/cvsimulator/j/
2)丸尾 敏夫,久保田 伸枝・他:視能学第2版.文光堂,東京,2011,76~78.
3)丸尾 敏夫,粟屋 忍:視能矯正学 改定第3版.金原出版,東京,2012,54.
4)丸尾 敏夫,本田 孔士・他:眼科検査ガイド.文光堂,東京,2004,275-282.
5)北原 健二,湖崎 克・他:先天色覚異常-より正しい理解のためのアドバイス.金原出版,東京,1999,10-36.

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