卒業研究発表

優秀演題

環境によるうつ病発症率の違い

― 日照時間や環境によってのうつ病発症率の違いについて ―

2016年度 【診療情報管理士学科】 優秀演題

背景

 うつ病とは気分障害の一種であり,抑うつ気分,意欲・興味・精神活動の低下,焦燥,食欲低下,不眠,持続悲しみ・不安などを特徴とした精神障害である.WHOのレポートは,今日精神疾患が世界の疾病負担の最も大きな原因になっており,次の数十年にはうつ病が最も大きな疾病負担になるとしている.また2004年の世界の疾病負荷では,うつ病を3位とし,うつ病の発症率は地域によって同様ではなく,温度や土地環境等によってうつ病発症率に差が生じている.
 そこで本研究では,地域環境によるうつ病発症率の違いを温度や環境の観点から文献調査し,それらの結果により今後望まれる地域別のうつ病対策を検討し,うつ病発症率の低下を目指す一資料とすることを目的とした.

対象および方法

地域別うつ病患者数の比較
 地域によってうつ病発症率に大きな差がある.人口一万人あたりを対象とし,うつ病患者数の統計をとった結果,北海道が一番多く138.20人,続いて鳥取県で132.80人.次に島根県の122.76人となっており,その他の10位までに長野や秋田・岩手など寒い地域にうつ病患者が多いことがわかった.一方で最もうつ病患者が少ない県は岡山県の41.06人であり北海道のうつ病患者の1/3となった.以上のことにより寒い地域にうつ病発症率が高い傾向にあることが伺えた.

結果および考察

1.うつ症状と日照時間の関係

 対象および方法で述べた3つの地域にうつ病患者数が多いと考えた時に日照時間が関係あるのではないかと推察し,考察することにした.
 北海道(札幌),秋田県(秋田市),千葉県(銚子市,習志野市),鳥取県(鳥取市),鹿児島県(鹿児島市,奄美市)の5道県7地域を対象にSPAQと呼ばれる気分や睡眠の季節変動の大きさを簡単に知る事ができるチェックリスト(合計点数が7点以下であれば季節変動が「正常範囲内」,8点~11点であれば「冬季うつの前段階」,12点以上は「冬季うつの可能性があるとされる」)を使い調査し,次のような結果が得られた.冬季うつのハイリスク者(12点以上)の割合が一番高かったのは秋田(4.0%).二番目が札幌(2.9%)その他のエリアの平均は1.4%であり,いわゆる北国で割合が高いことが分かる.ところが例外もあり,鹿児島県奄美市が挙げられる.南国にも関わらずハイリスク者の割合が秋田,札幌並みに高かったのである.秋田,札幌,そして南国奄美,共通項が一つ見受けられた.それは日照時間が短いという事である.では,なぜ日照時間が短いとうつ病の発症率が高くなるのかを考えたときセラトニンとの関係が挙げられる.

2.うつ症状とセラトニンの関係

 実際にセラトニンはうつ病の治療で注目されている.セラトニンとは,光の刺激が目から脳に送られることで,生産が促される神経伝達物質の一つである.日射量が減ることでセラトニン生成が減少し,脳の動きが低下する.セラトニンバランスが崩れると脳の活動が極端に低下し,半分眠ったような状態に陥りやすくなると考えられている.これらのことより,日射量が低下することでセラトニンの分泌が低下し,うつ病の発症を促すのではないかと考え,そのため日照時間の少ない地域でのうつ病発症率が高いのではないかと推察した.

まとめ

 本研究では,環境によるうつ病発症率の違いについて文献調査を行い,考察した.北国等の日照時間が短い地域ではうつ病発症率が高い傾向にありがちである.また,室内照明等の光ではものを見るのには十分な明るさでも,非視覚性作用にとっては不十分,真っ暗闇という場合がありセラトニンの分泌が低下し,結果うつ病の発症率が高くなるため,極力日光を浴びるということも重要である.そのため,日照時間が短い地域でのうつ病対策を考察することが今後の重要な課題であろう.

文献

1) うつ病患者数(internet) : http://todo-ran.com/t/kiji/14741
2) 冬季うつ病(季節性うつ病):光療法の総合サイト(internet) :http://portal.lighttherapy.jp/sad/post_105.html
3) 「もっと光を!」冬の日照不足とうつの深い関係(internet) :http://style.nikkei.com/article/DGXMZO81016270X11C14A2000000

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