卒業研究発表

VDT作業後の休息方法の違いによる涙膜破壊時間(BUT)の変化について

2016年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

近年,スマートフォン使用者が増加し,インターネット利用者,利用時間ともに増加している1).このような状況によりVDT作業量が増え,VDT症候群患者数も増加している1).眼症状には,ドライアイ,眼精疲労,などがある2).ドライアイの原因には,質的な異常,量的な異常があるが,今回は質的な異常に着目した.ドライアイ改善方法の中で最も簡便なものは休息であるが,その方法には温罨法や冷罨法などが挙げられる6).そこで本研究休息方法それぞれで,涙液の質改善がどの程度かを検討することを目的とした.涙液の質の改善がみられれば,ドライアイで悩む方への提案ができると考えたからである.
今回の研究では,VDT作業後に,休息,温罨法,冷罨法を行うことによって涙膜破壊時間(BUT)がどの程度変化するかを調べる.
また,アンケートを実施し,自覚的に乾燥感が改善されたと感じる方法はどれかを調査する.

対象および方法

対象は視能訓練士学科1~3年生までのスマートフォン利用者90名にドライアイQOL質問表によるアンケートを実施し,QOLスコアのドライアイ平均値(33.7)以上の者20名20眼とした.
方法はVDT作業前後のBUTを測定後,A:休息,B:温罨法,C:冷罨法をそれぞれ5分間行い,その後のBUTを測定した.なおA~Cは別日に実施した.最後に自覚的乾燥感改善についてのアンケートを行った.
VDT作業後のBUTと,A,B,C,それぞれの変化の差を多重比較にて検討した.なお有意基準を0.05として検討を行った.

結果

 VDT作業前後のBUT測定値では平均0.8秒の低下がみられた.次にVDT作業後からのBUTの変化では,A:0.7秒,B:3.5秒,C:3.2秒の改善がみられた.多重比較の結果,AとBのP値(0.01),AとCのP値(0.02)ともに有意差ありとなった.またBとCのP値(0.97)となり,有意差なしとなった.(図1)
 また,アンケートによる自覚的な乾燥感の改善ではB:20人中13人,C:7人,A:0人となり,Bが最も改善したと感じていた.

考察

温罨法では,マイボーム腺脂の溶解が起きBUTの改善につながったと考える.また,冷罨法では,リラックス効果が起き,副交感神経が有意となり涙液分泌につながったと考える.
今後は,長時間VDT作業をしている方を対象に,温罨法・冷罨法での最適な温度がどの程度か,症状や訴えに応じてどの休息方法が最も適しているかについて検討していきたい.

まとめ

VDT作業後の休息方法の違いによるBUTの変化について検証した.
温罨法と冷罨法でBUTの改善がみられた.
温罨法と冷罨法ともにドライアイで悩む人へ提案ができる可能性が示唆された.

文献

1) 総務省「平成26年通信利用動向調査」(internet ):http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/statistics/statistics05.html
2) 栗本 晋二:VDT作業が視機能に与える影響.人間工学.19(2),1983,87-90.
3) 井上 佐智子,川島 素子・他,マイボーム腺機能不全(meibomian gland dysfunction:MGD)ファルマシア.50(3),2014,243
4) YuriSakane,MasahikoYamaguchi:Development and Validation of the Dry Eye–Related Quality-of-Life Score Questionnaire. JAMA Ophthalmol.131(10), 2013, 1331-1338.
5) ドライアイQOL問診表(internet):http://www.dryeye.ne.jp/qol_monshin/index.html
6) 目が疲れた!眼精疲労は目を温めるべき?冷やすべき? (internet):http://www.skincare-univ.com./article/005932/
7) 近藤 由紀子,武田 利明:後頭部への冷罨法の有効性に関する実証研究.Japanese Journal of Art and Science.8(3),2009,25-34.

記事一覧
大阪医療福祉専門学校 TOP

CATEGORY MENUカテゴリーメニュー

もっと詳しく知りたい方は