卒業研究発表

スマートフォン使用時におけるパソコン用眼鏡の効果

2016年度 【視能訓練士学科 3年制】 口述演題

背景

ブルーライトは眼精疲労の原因の一つと以前から言われており,パソコンやテレビ,スマートフォン等の液晶画面から多く発生している.
VDT作業時の眼精疲労の軽減にパソコン用眼鏡(ブルーライトカットレンズ,以下PC用眼鏡)を装用することが推奨されており3),パソコン作業時のPC用眼鏡の効果については実証研究が行われている.しかし,同様にブルーライトを発生しているスマートフォンを用いた作業時での実証研究は行われていない.そこで,我々はスマートフォン使用時にもPC用眼鏡を装用した方が眼精疲労の軽減に繋がるのではないかと考え,本研究に至った.

対象および方法

対象は,完全屈折矯正で視力(1.5)を有し,屈折異常以外の眼疾患を有さない視能訓練士学科3年生20~26歳の20名20眼とした.
検査は,中心フリッカー(以下CFF)と調節近点(ダコモ)を用いて,眼精疲労の評価を行った.
検査条件は,完全屈折矯正眼鏡を装用し,PC用眼鏡のブルーライトカット率は旧英国規格で約50%のものを使用した.スマートフォンはiphone6/6s(液晶画面のサイズ104×59mm)を使用し,文字サイズは8pt(ネットニュース)および6pt(SNS),画面の明るさは最高輝度の500cd/m2に統一した.スマートフォン使用は眼前25cm~30cmで行い,前半15分はネットニュースの黙読,後半15分はSNSで作業を行うこととした.
方法は,CFFと調節近点の測定を①スマートフォン作業前,②作業後,③PC用眼鏡装用下での作業後に測定した.なお,検査後に自覚的なPC用眼鏡の効果についてのアンケートを行った.統計はT検定(対応あり)を用いた.

結果

スマートフォン作業前CFF値(48.77Hz)とPC用眼鏡非装用下の作業後CFF値(46.81Hz)に有意な差がみられた.しかし,作業前CFF値とPC用眼鏡装用下の作業後CFF値(47.96Hz)は有意な差はみられなかった.
調節近点においては,作業前調節近点(10.1cm)とPC用眼鏡非装用下の作業後調節近点(10.77cm)に有意な差がみられた.また,作業前調節近点とPC用眼鏡装用下の作業後調節近点(10.69cm)においても有意な差がみられた.
検査後に行ったアンケートでは,被検者の55%が「PC用眼鏡があったほうが楽」という回答であった.

考察

CFF値は,ブルーライトが眼に照射されることで,視交叉よりも前の視覚伝導路の機能低下1),大脳皮質の活動水準の低下2)など,さまざまな原因により低下する.よって,PC用眼鏡の装用で網膜に照射されるブルーライトの量が軽減したことで,CFF値低下が軽減されたと考える.
調節近点においては,中村2)によると,明視に関する筋の疲労ではなく輻輳運動により眼の疲れが誘発されるとある.その結果,PC用眼鏡の装用の有無に関わらず,眼精疲労が起こり調節近点の延長に繋がったと考える.

まとめ

アンケート結果からは,スマートフォン利用者への有用性が示唆された.しかし,30分のスマートフォン作業において眼精疲労の軽減にPC用眼鏡が有用であるかどうかは,母数の少ない今回の研究では断言できない.今後母数を増やしさらに研究を進める必要があると考える.

文献

1)岩崎常人:眼精疲労の測定方法と評価-CFFとAA-1-.眼科.51(4),2009,387-395.
2) 中村芳子:眼の疲れ総論.あたらしい眼科.27(3),2010,281-286.
3)坪田一男・中村孝博:序説 眼とブルーライト.あたらしい眼科.31(2),2014,161-163.

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