卒業研究発表

国際比較における日本と福祉先進国での高齢者福祉のあり方について

2016年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

背景

日本の高齢化は,世界的にみてもかなりのハイスピードで進行している.今現在,約3人の若年層で1人の高齢者を支える人口構造は2060年までに大幅に変化し,若年層1人で高齢者1人を支える時代が来ると予測されている.
日本では65歳以上の高齢者が7%を超え高齢化社会から既に高齢社会となっている.事実,高齢社会を取り巻く社会的課題(介護離職や孤独死等)は山積している.日本は,この加速する超高齢化社会にどのように向き合えばよいのか,そして高齢者を含めた地域社会において,人々がより豊かに,より良く生きるためにはどのような理念や制度を取り入れ,それらを包含する社会システムが必要だと考える.
本研究では,急速に高齢化が進む日本で,高齢者福祉に対してどのように向き合い,どのような制度を取り込めばよいか,同じく高齢化の進行する福祉の諸先進国に目を向ける.そして今後の日本の高齢者福祉のあり方を明らかにすることを目的とした.

研究方法

わが国での高齢者福祉制度は,どの程度発展しているのかを福祉の諸先進国と比較してみることにした.比較対象はアメリカ・デンマーク・スウェーデンの3ヶ国にし,各国における福祉の重要性や制度について,またその国においての福祉への考え方などについて比較した.

本論

日本と福祉の諸先進国(3ヶ国)で比較した.

1.デンマーク

デンマークの高齢者福祉の特徴としては,福祉と医療の垣根がない地域包括ケアの実践がある.デンマークの医療は家庭医制を採用しており,「人」を中心に介護と医療,見守りや生活支援などのサービスを継ぎ目なく連携することで,高齢者のニーズに合わせたきめ細かい対応が可能となる.デンマークの高齢者は,自宅に住み続けながら必要なケアを受けることによって,1人でも安心して「自分らしい生活」を送ることができるようになっている.

2.スウェーデン

スウェーデンの社会福祉の根幹になっているのは社会サービス法(市民の社会・経済的な保障を目的とする)である.すべての国民の健康とケアが,地域,施設どちらでも平等かつ質の高いものとなることを目指したものである.スウェーデンの福祉に対する考え方では,社会の中心に個人を位置づけ,社会と個人が直接契約すると定義し,自己決定,自己選択と自己投資を重要とする.社会全体の不透明をなくし,「市民参加の政治」を行い,政治に対する信頼を得ることで高福祉社会を形成することができる.

3.アメリカ

アメリカにおいては,高齢者を大切にすることが国民全体に根付いており,自分たちで出来ることは自ら行うという自助の精神が米国人の精神的根底にある.高齢者福祉対策としてはアメリカ高齢者法があり,連邦,州,地方政府の協力と責任によって高齢者が包括的な社会サービスを均等に得られる機会を保障する制度がある.

4.日本

老人福祉法が制定される以前の日本の高齢者福祉施策は,生活保護法に基づく収容保護が中心だったが,高齢者の増加・就労機会の減少など高齢者を取り巻く環境が変化したことを受けて,すべての高齢者を対象者とした初めての制度である老人福祉法が制定された.さらに1970年代半ば以降,在宅福祉への認識が高まり,在宅福祉施策の充実が図られた.
また,1990年代に入り,急速に高齢化が進展し,核家族化により,家族の介護機能が低下して,高齢者の介護が社会的な問題となってきたことから,介護保険法が2000年に施行された.以上のことから日本は老人福祉法が根幹となっていることがわかる.

まとめ

本研究では高齢化が進んでいる日本において,今後の高齢者福祉のあり方を明らかにするために福祉の諸先進国と比較した.福祉の諸先進国でも高齢化が進んでいるところが複数あり,それぞれの国でも対策が行われていることが窺えた.福祉の諸先進国では,自国民の思想や考え方を根幹に制度政策を行っているため,日本でも自国の国民性を重要視し制度を見直す必要があると考えられた.
また高齢化を取り巻く問題には食糧難等の問題もあり,今後の課題と考えられた.

文献

1)デンマークに学ぶ高齢者福祉(internet): http://www.glocom.ac.jp/chijo_lib/118/052-062_A_igari.pdf#
2)尾台安子・松本短期大学紀要・スウェーデンの高齢者福祉の現状(internet)
3)米国における高齢者福祉対策(internet): http://www.clair.or.jp/j/forum/c_report/pdf/202-1.pdf

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