卒業研究発表

避難所における生活環境とストレスについて

2016年度 【診療情報管理士学科】 口述演題

背景

わが国では,東日本大震災や熊本地震などの大型地震が多発している.災害時の避難所には主として体育館や公民館といった公共施設が用いられる.これらの施設は元来,避難所を主たる用途として設計されたものではない.そのため,それら施設が避難所として使用される際には,生活環境上の問題が生じることが懸念される.地震災害の際には,避難所生活が,応急仮設住宅が建設されるまでの数ヶ月という比較的長期に渡って続くこととなるため,これらの生活環境上の問題は無視することのできない問題であると考える.わが国では,心のケアのガイドラインが公布されているが,2016年4月14日に発生した熊本地震における避難所生活者にも多くのストレスによる被害が及んでいる.
本研究では,避難所の生活環境によってどのような問題が起こっているのかを研究し,その対処方法を考察する.そして,これから起こるであろう大型地震の避難所生活を想定して,そこから起こるストレスにおける被害をどのように軽減させられるかを検討することを目的とした.

本論

1. 避難所の環境について

災害時の避難所は上記で挙げたように,避難所を主たる用途として設計されたものではない.東日本大震災では,そのような施設に避難所にいた合計日数は,およそ33%は2日から3日であるが一年を超える避難生活者も少なからず存在している.長期間の避難所生活により,さまざまな問題が発生する.
新潟中越地震の被災者95名に対して避難所生活における生活環境に対する愁訴について永幡幸司らが調査を行っている.これによると,避難所の生活環境に対する愁訴についての諮問では,生活空間の広さ,避難所の温度,明るさ,音,におい,風呂、トイレ,その他の設備,プライバシーについて,困ったことがあるか、調査されている.
以上のことを調査した「避難所生活における各生活環境要素に対する愁訴者数と愁訴率」(表1)においては,「生活空間の広さ」についての愁訴率が最も高いことが示唆されている.

2.被災者への対応について

長期間の避難所生活において生じる,被災者のストレス反応にはさまざまなものがあり,心的トラウマと社会環境ストレスに大別される.初期では,「心理・感情面」,「思考面」,「行動面」,「身体面」のストレス反応がおこる.
中長期のストレス反応では,ストレスの症状が慢性化し,精神疾患を患い日常生活や仕事に影響がでることがある.災害後3ヶ月以降の時期には,コミュニティの変化により不安や孤独感が強まり,閉じこもりや自殺者が出ることもある.
それらの対応として,安心・安全・安眠の確保を行い,こころのケアチームを結成し,医療との連携を図り,心身共にストレスへの対応も必要となってくる.さらに,コミュニティの再生を支援し,コミュニティにおけるこころのケア活動を立ち上げることも重要である.

まとめ

長期間の避難所での生活によるストレスを軽減させるためには,個人の生活環境の広さの確保が重要である.そのため近年,政府と民間宿泊施設が協定を締結し無料で被災者を宿泊させる取り組みが行われている.しかし現状では,避難所生活が長期間にわたって行われている.
改善のためにはこれらの施設を気軽に利用できることが重要だと考える.そのために施設数を増やし,被災者が利用できるサービスの情報を専門職などが提供する必要がある.
 避難所での生活によるストレスが原因の病気や事故はメディアを賑わせている.これら病気や事故を防ぐためには,専門職らが避難所生活者の潜在的ニーズを発見することが課題であろう.

文献

1)避難所における生活環境の問題とストレスとの関係について(internet) 永幡幸司 金子信也 福島哲仁https://www.sss.fukushima-u.ac.jp/
2)被災者のこころのケア 都道府県対応ガイドライン(internet)内閣府 平成24年3月 http://www.bousai.go.jp/

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