卒業研究発表

特別養護老人ホーム利用者における視覚機能の現状

2016年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

まとめ

1) 早川むつ子,藤木慶子,他:原発性定型網膜色素変性の遺伝的異質性と予後に関する18施設調査.臨眼46:1025‐1029,1992.

文献

今回の研究では,高齢者の視力と施設内での活動の関係はみられなかった.活動には環境や質的な要素も関係し,単純に視力のみで推し量ることができないということが分かった.今後の調査では,活動を遂行する上での満足度等を加味し調査する必要があると言える.
認知症高齢者でも簡単な視力のスクリーニングテストを使えば大まかにどの程度の視力を有しているか把握することができるということが分かった.
施設入所者の言葉から,生活を送る上で自宅での眼鏡の使用状況また,適切な眼鏡をつけているかを把握することが重要と思われる.

考察

調査の結果,遠見,近見ともに設定値の視力の有無にかかわらず施設内の活動しており,高齢者の視力と施設内での活動の関係はみられなかった.近見視力では対象者全員が視力0.6の基準を下回っていた.基準となる設定値が高く,施設内の活動に必要な視力の基準が高かったのが原因だと考えられる.
今回の調査で活動には部屋の明るさ,作業を行う距離,本人の遂行度,満足度等,環境や質的な要素が含まれており,視力のみで活動が低下するとは言えないことが考えられた.
また,自宅と施設で眼鏡の使用状況が違うという発言から,自宅と施設で環境が異なる為,活動を遂行する上で質的な影響を与えていると考えられる.

結果

両スクリーニングを実施した結果,遠見の裸眼視力が0.6以上の者が14名で眼鏡を用いることで更に3名が0.6以上であった.近見視力では裸眼,眼鏡による矯正視力ともに全員が0.6未満であった.
検定により,遠見視力,近見視力ともに設定値の視力の有無にかかわらず,施設内の活動に参加していることが明らかになった.
アンケート,スクリーニングテスト時に対象者から「家に(眼鏡が)ある」,「眼鏡を作りたいが作れない」といった発言があった.

対象および方法

1.対象
 特別養護老人ホーム入所者(60代~90代)
男性:5名,女性:15名 計20名
認知症高齢者の日常生活自立度
Ⅰ-4名,Ⅱa-3名,Ⅱb-6名,Ⅲa-4名,Ⅲb-2名
2.方法
 特別養護老人ホーム入所者を対象にし,森実式ドットカードによる近見視力のスクリーニングテスト,ランドルト環による遠見視力のスクリーニングテストを実施.その後,施設内活動に関するアンケートを実施.測定は裸眼,眼鏡での矯正視力状態で行い,普段眼鏡を使用している方には裸眼での測定後,眼鏡使用時の視力を測定した.研究目的や方法,研究への参加の任意性と同意撤回の自由,個人情報の管理について本校倫理審査委員会の承認を得た書面にて説明を行い,同意を得たもののみを対象とした.
分析は,X²検定を用い視力が0.6以上の者と未満の者がアンケートで回答した活動の参加状況に差異が認められるか検証した.

背景

日常生活上で視力は生活活動と密接な関係があると考えられる.早川らによると「一般的に視力は0.5以上あれば日常生活に支障はなく学校や職場では特別な配慮は必要ない」¹⁾とある.作業療法士は生活活動を診ることが特徴であるが,活動と視力に関するOT文献はみられなかった.特別養護老人ホーム入居者の活動量と視力には関係があると考えた.
そこで私たちは,特別養護老人ホーム利用の高齢者が現状としてどの程度の視覚機能を有し,どの様な活動を行っているのかを検証し,施設入所者の実態を調査したので報告する.

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