卒業研究発表

高齢者のADL・IADLの実行度・満足度と主観的健康感との関連性

2016年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

平成27年には「ベビーブーム世代」が前期高齢者(65~74歳)に到達し,その10年後には高齢者人口は約3500万人に達すると推測される1).高齢化率の高さを目の前にし,介護を必要とする高齢者が,健康で安心して自分らしい生活を送るために主観的健康感を高める取り組みが必要だが,必ずしも作業療法士と高齢者の考えているニーズに適した健康支援法が明らかになっていない.そこで高齢者の日常生活活動(以下,ADL)・手段的日常生活活動(以下,IADL)の実行度・満足度と主観的健康感との関連性を調査し,臨床の場で高齢者の主観的健康感を高めるADL・IADLに沿った作業療法の介入をしやすくするアプローチとして取り入れるヒントとしたい.

対象および方法

対象者は,要支援1・2,要介護1・2で認知症の診断を受けておらず,うつ状態が見られない65~95歳の方,計35名とした.調査項目は,基本属性と主観的健康感について,健康だと思う時の項目・実行度と満足度,それについての理由を自由記載で記入してもらった.主観的健康感・実行度と満足度についてはVisual Analogue Scale(以下,VAS)を用い,健康だと思う時の項目は興味・関心チェックリストを用いた.倫理的配慮として研究目的,方法などを本校倫理審査委員会の承認済みの書面を口頭にて説明し,同意を得た(承認番号:大医福 第15-教-25号).

結果

全対象者の主観的健康感の平均は5.76とやや低い数値であったが,ADL・IADLと主観的健康感・実行度に弱い正の相関がみられた.(図1) 次に健康だと思う項目については,「自分で食べる」が一番多く選ばれ,次いで「買い物」や「自分で服を着る」が選ばれた.「買い物」は主観的健康感と実行度に弱い正の相関がみられた.自由記載にて「毎日行くようにし,商品の値段を見ている」「足が動かないので一人で思い通りに行けない」「シルバーカーや,週一回でヘルパーさんと行く」 という意見がみられた.

考察

結果から,65~95歳の女性にとって主婦としての経験・役割を達成することで,自己充足感・意欲・自信向上が主観的健康感の向上に繋がるのではないかと考える.今回女性にアンケートを取ることが多かった.昭和初期には男性が仕事・女性が家事をしていたというイメージが強くあり,買い物が日課となっていたためこのような結果になったと考えられる.このことから,加齢による身体面の不調や社会資源の利用により役割がなくなることで,活動性・意欲・関心の低下に繋がるのではないかと考える.

まとめ

今回,アンケートを取った対象者のほとんどが女性であったため,男性に対してもアンケートを取り傾向を知る必要があると考えられる.また今後,男性が家事・女性が仕事という社会環境が変化する可能性があり,作業療法士は対応が必要だと考える.そのためには心身機能・環境因子・個人因子の評価を行い,役割ができない理由と共にその役割に対する対象者の本音を聞き取りアプローチを行うことで,主観的健康感の向上を図ることが出来るのではないかと考えられる.

文献

1)厚生労働省(internet):http://www.mhlw.go.jp/

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