卒業研究発表

面接時に過去の情報の有無で関係性に変化があるか検証

― 過去の大切さ ―

2016年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

はじめに

人間のコミュニケーション機能として,まず頭に浮かぶのは言語である.言語を用いる事で大量の情報を操る事が可能となった¹⁾.
そこで本研究では,情報量が多いほど対象者が面接者に対し,親しみやすさを感じるのではないかと考える.対象者の過去の情報を知らず面接を行うと緊張により会話が弾まず,良好な対人関係を取ることは困難だと考える.また,対象者の過去の情報を知った上で面接を行うと,言いたいことが相手に伝えられ,対象者の思いを抽出でき,作業療法アプローチが適切になると考えた.そこで「情報があるほうが対象者も安心して面接が行える」という仮説を考えた.それらの事を明らかにする為にアンケート調査を実施した.

対象および方法

1.対象 
大阪医療福祉専門学校の作業療法士学科学生(18名),理学療法士学科学生(7名)の合計25名を対象に実験を実施した.
2.実験の手順
①対象者にオリエンテーションを行う.
②対象者の過去の情報を事前に聴取する.
③生活行為聞き取り調査シートを用い,情報収集・目標設定を行う.
④面接者を情報有り無しの2群に分け,情報収集後2回に分けて面接を行う.
⑤毎回面接後にアンケートを記入してもらう.

結果

アンケート項目の中でも特にQ4の「雰囲気は話しやすかったですか?」に対し,情報有り(A群)では,「大変そう思う」が半数以上で情報無し(B群)では「あまり思わない」が半数以上であった.比較すると有意に高値を示した.またQ5の「話は弾みましたか?」に対し,情報有り(A群)では,「大変そう思う」が半数以上で情報無し(B群)では「あまり思わない」が半数以上であった.比較すると有意に高値を示した.

考察

Q1,2の結果で有意差が見られなかった理由としてQ1は対象者に緊張感を与えずに面接を行ったためであると考える.また,Q2は表情を伺い面接を進めるため,不快感に対する変化が見られなかったと考える.Q3~6の結果で有意差が見られた理由として,過去の情報を知り言いたいことが言えるように話の誘導を行ったためであると考える.そのため,雰囲気は良く話が弾み親近感が湧いたと感じたのではないかと考える.
 発言度,雰囲気,会話の弾み度,親近感に有意差があるため臨床現場で初回面接を行う際,情報を知り面接を行うと信頼関係の構築,目標設定の本質まで聞き出すことに繋がる.その結果,作業療法を積極的に取り組めるのではないかと考える.

まとめ

対象者の情報を知らずに面接を行うと話は弾まず言いたいことが言えないこと.また,情報を知った上で面接を行うと,言いたいことが相手に伝えられ,会話も弾み対象者の思いを抽出できるので作業療法アプローチが適切に行える事がわかった.面接する際,対象者の過去の情報の有無で対象者が言いたいことが言えたのか言えなかったのが明らかになった.

文献

1)中村克樹:非言語コミュニケーションの意義.学術の動向(9),2009,28-31.

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