卒業研究発表

圧覚の左右差と作業療法

2016年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

 圧覚の入力に意識を向けたアプローチを行う事で治療効率の向上に繋がるのではないだろうかと考えた.
 先行研究¹⁾では手の筋が緊張している状態では重さに関する左右差は見られないとしていた. 利き手の方が無意識に使っている分に筋力がある為,筋が緊張している状態では感覚ではなく筋力で重さを代償していると考えた.
そこで,筋緊張を緩和させた状態では非利き手の方の圧覚が優れているのではないだろうかと考えた.
目的として,随意運動には感覚神経の入力が必要であるとされており,除重力位では非利き手の方が感覚が優れているのではないだろうかと考え,閉眼時における圧覚の左右差を明らかにする.

対象および方法

対象として,大阪医療福祉専門学校の作業療法士学科に在籍する女性31名,男性15名計46名の整形外科学的・神経外科学的に疾患が無い者とする.
方法は,机の上に長方形の箱を用意する.左右の肘を机の上に置いて,箱の上に手掌面を上にした状態で置いてもらう.目を瞑った状態で下を向いてもらい,片方の手掌面の上に球状の100gの重りを置き,もう片方の手掌面には直径約4cmの穴が空いている空の球状の器を置き,小豆を注ぎ入れていく.重りと同じ重さになったと思った所で,「はい」と合図を出していただく.この実験を行う際には,被験者には重さを伝えないで行い,左右の手で行う.

考察

実験の結果により非利き手の方が一定の重量まで計る事が出来ている事が分かった.非利き手は利き手より圧覚が正確であると考え,非利き手を使う事によって,右脳が活性化や集中力の向上,HbO2の増加,前頭葉の脳血流が増加³⁾し,非利き手を使用する治療を取り入れる事で認知症の予防にも繋がる可能性があると考えられる.しかし,利き手から非利き手という順番で行った為に,学習効果が生じてしまい,圧覚に左右差が現れた要因となったのではないかと考えられる.

まとめ

結果として除重力位での閉眼時における圧覚の実験では左右差が見られた.非利き手を使う事によって右脳が活性化し,集中力の向上,HbO2や前頭葉の脳血流の増加が見られ,認知症の予防になるのではないかと考える.
今後は認知症の予防として非利き手を積極的に使用していく事が認知症の予防に繋がると考え,今後の研究として続けていきたい.

引用文献

1)和島英明:「力の感覚」の左右差について-徒手筋力テストにおける検物の左右差を推察する-.理学療法学第19巻第4号:1992,405-409.
2)佐藤方彦,菊池安行:重量感覚に関する一考察:人類學雜誌 75(3), 1967,147-150.
3)村山菜都弥,村田伸:利き手と非利き手作業時における脳循環動態の比較.西九州大学リハビリテーション学部:2012,195-198.

参考文献

1)東口大樹,大矢敏久・他:聴覚および視覚フィードバックが運動学習の習熟過程・保持に及ぼす特性の違い. 日本理学療法学術大会 2011(0), 2012,Aa0165-Aa0165.
2)太場岡英利,超智亮・他:重量保持動作における課題の難易度が重量知覚に及ぼす効果:2008,593-596.
3)吉田友英:右利き,左利きの考え方.東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽頭科:2010,147-150.

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