卒業研究発表

精神障害者へ就労支援を行う作業療法士の視点

2017年度 【作業療法士学科 昼間部】 口述演題

背景

 交通機関や店内等で精神障害者に対して不思議そうに目を向けたり,耳打ちをする人を目にすることがある.印象について,「対応に不安や恐怖心を抱く傾向もある」「社会適応ができない」1)など負の印象が多いと報告がある.この現状の中で精神障害者は生活する為に就職する際,社会からの偏見や障害の理解の低さの中でどのように生活しているのか気になった.厚生労働省2)によると,就労を望む精神障害者の中で就職できたのは47.7%であった.就職率が低い要因は,就労支援に携わる作業療法士(以下OT)が少なく,知識・技術の実践方法を学んでいないこと3)が理由であった.OTが就労支援を行う際の視点について調査した.

対象と方法

 精神障害者の就労支援に携わるOT25名にアンケートを送付.送付内容として,研究協力のお願い,研究の目的・方法を記載したアンケート,同意撤回書,返信用封筒を同封.回答をもって同意とした.内容は1)就労前に患者様と携わる際の評価の視点2)就労後患者様と携わる際の評価の視点に関して自由記述とした.返信の〆切期日は平成29年4月25日~5月25日とした.得られたデータは,各質問で単純集計とKJ法に基づいて行った.倫理審査委員会より許可を受けて実施(大医福第16-教-019号).

結果:考察

 アンケート回収率は60%(15人).1)の自由記述は23個,2)は19個の記述があった.アンケートの自由記述をKJ法に基づき2つのカテゴリーに分類し,更に2つのサブカテゴリ―に分類した.生活面では,対象者について(性格,考え方,病識の有無)と精神的側面の能力(ストレス対処能力,コミュニケーション能力)である.仕事面では,スキル(仕事の質,強み)と意欲(働きたい気持ち,就きたい仕事内容)である.結果より,就労支援を行う際の視点は大きく分けると生活と就労の2本柱であることが分かった.山根4)によると「作業適正や基本的作業能力以外に就労にあたって具体的に確認」「対象者個々の特性を評価」を挙げており,今回の結果によってさらに実際の現場で具体的な視点を得る事が出来た.結果を基にチェックリストを作り,支援をしやすい環境を作っていく必要があると考える.

まとめ

 精神障害者の就労支援に関わる作業療法士は少なく,その要因として支援のための知識・技術を学んでいないことが理由としてあった.今回,精神障害者の就労支援を行う際の視点に興味を持ち,就労支援に関わる作業療法士に対して自由記述によるアンケート調査を行った.得られた結果から,支援の視点として生活と就労の2本柱であることが明らかとなった.結果を基にチェックリストを作り支援しやすい環境を作る必要がある.

文献

1)仙田志津代・他:看護学生の精神障害者に対するイメージ‐1年次学生を対象にして‐.つくば国際短期大学,34,201-210,2006.
2)厚生労働省:ハローワークを通じた障害者の就職件数が4年連続で過去最高を更新 精神障害者の就職件数が身体障害者の就職件数を初めて上回る平成27年度・障害者の職業紹介状況等.
3)香田真希子:OTが就労支援を実施するにあたってのバリア.作業療法ジャーナル40(11) ,2006,1128-1131.
4)山根寛:精神障害と作業療法-治る・治すから生きるへ 第3版,2015.

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